2025年11月3日(月) 宇宙で生まれた短歌

宇宙で生まれた短歌

岩手県花巻市では昨年、花巻スペースプロジェクト UP花巻が開催されました。その取り組みの一つとして、花巻北高等学校の生徒たちが中心となり、宙で短歌を創作するというユニークな試みが行なわれました。

全国や海外から募った短歌の上の句(五・七・五)と、生徒らが創作した下の句(七・七)を、人工衛星「YODAKA」に地上から別々に送信します。これらが宇宙空間に到達した順番で組み合わさり、一首の短歌が完成する仕組みです。

次の短歌は、完成した三百七首の中から秀作の一席に選ばれた作品です。

「目が慣れて きたころ空は 語りだす あなたにとどけ わたしはここに」

宇宙で偶然に生まれたとは思えないほど、感性豊かで心に響く一首です。宇宙で短歌を作るという試みは、高校生たちにとって未知への探究であり、壮大な宇宙に改めて思いを馳せる貴重な機会となったことでしょう。

日々忙しく過ごしている私たちですが、空気が澄んでいるこの季節には、ふと夜空を見上げて、星や宇宙に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

今日の心がけ◆夜空を眺めましょう

感想

この短歌プロジェクトには、心から感動させられました。

特に「宇宙で偶然に生まれる短歌」というコンセプトが、偶然と必然、自然と人為の境界を曖昧にし、詩の持つ根源的な力を再認識させてくれます。

秀作に選ばれた一首「目が慣れて きたころ空は 語りだす あなたにとどけ わたしはここに」は、五・七・五と七・七が別々に送られながらも、まるで初めから一体だったかのように響き合っています。

「空が語りだす」という表現には、静寂の中に潜む声を感じさせ、そして「あなたにとどけ わたしはここに」という結びは、宇宙の孤独と地上の存在のつながりを鮮やかに浮かび上がらせます。

高校生たちがこうした創造的なプロジェクトに関わることで、自分の表現が未知の空間と交わるという、現代ならではの詩的体験が可能になっていることに驚きと希望を感じました。

単なる技術の活用ではなく、それが人間の感情や存在とどう結びつくかを試みる姿勢に、深い人間性が宿っています。

「今日の心がけ」にあるように、私たちもただ忙しさに追われる日々の中で、ふと夜空を見上げ、宇宙の静けさに耳を澄ます時間を持ちたいものです。

その行為が、自分自身の小さな声や願いに気づく手がかりになるのかもしれません。

否定的な感想

この取り組みに対して一点、気になる部分があるとすれば、それは「偶然に生まれた短歌」ということばの捉え方です。

五・七・五と七・七を別々に送信し、それが宇宙空間で組み合わされるという仕組み自体は非常にロマンチックですが、逆に言えば、作者たちの意図や文脈、表現の統一性が失われる可能性もあります。

詩や短歌というものは、本来、作者の意識や感情の流れに沿って構成されるものですが、その整合性が偶然の並びによって左右されるというのは、作品としての完成度という点では疑問が残るかもしれません。

また、宇宙空間での通信技術を使うこと自体が目的化してしまい、詩そのものの質や内容へのこだわりが薄れてしまう懸念もあります。

技術的な面白さが先行しすぎると、詩が単なる「ギミック」として扱われてしまう危険性があるのではないかと思います。

若い世代にとって貴重な表現の場であるからこそ、「偶然に頼ること」と「詩の本質を探ること」のバランスをもっと慎重に考えてもよかったのではないでしょうか。

それでもなお、試みとしての斬新さと、そこから生まれた作品の美しさは否定できず、このような挑戦が今後の表現のあり方を広げる一歩になることは間違いないでしょう。

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