サークル活動
Aさんの会社には、いくつかのサークル活動があります。運動系には、ジョギングや野球などがあり、文化系には、茶道、短歌などがあります。これまでAさんは、そうしたサークルには入っていませんでした。
ある日の昼休み、外食した店で偶然違う部署のKさんと会いました。話をしていると、Kさんが短歌サークルでの出来事について語り始めました。
これまで一首も短歌を作ったことのないAさんは、何気なく話を聞いていましたが、作歌の楽しみやメンバーとの交流について話すKさんの様子を見て、次第に興味がわいてきました。
「喜怒哀楽やその時の感動を一首の短歌にすると、まるで一枚の写真のようにその時の思い出がよみがえるのよ」と話すKさんに心を動かされたAさんは、短歌サークルに参加するようになりました。
短歌の作り方を学びながら、道端に咲く花や、ちょっとした喜びなどを歌に詠むことで、心が豊かになったように感じているAさんでした。
今日の心がけ◆心豊かに過ごしましょう
出典:職場の教養6月号
感想
この話は、日常の中に潜む小さなきっかけが、人の内面に大きな変化をもたらす瞬間を丁寧に描いていて、とても共感できました。
Aさんが短歌サークルに興味を持ち、参加を決意するまでの流れが自然で、無理のない心理描写に好感が持てます。
特にKさんの「一首の短歌は一枚の写真のように思い出をよみがえらせる」という言葉は非常に印象的で、言葉の力や詩の魅力を的確に表現しています。
Aさんが「心が豊かになった」と感じる変化も、単なる感想に留まらず、視点の変化や感受性の成長を伴っている点に深みを感じました。
日々の些細な出来事に目を向ける姿勢は、現代の忙しない生活の中で失われがちな「心の余白」を取り戻すヒントになるように思います。
「心豊かに過ごしましょう」というメッセージとも非常に親和性が高く、実生活への応用も感じられる素晴らしい締め方です。
否定的な感想
現実には、新たなことに挑戦する際には不安や戸惑いがもっと強く現れることが多いのではないでしょうか。
Aさんが短歌を始めることに対して迷いや緊張が描かれていないため、やや一面的な人物描写にとどまっている印象を受けます。
共感を深めるためには、最初の不安や失敗、躊躇いといった「人間くささ」がもう少しあってもよかったかもしれません。
また、サークル活動への参加が「心を豊かにする」という結論にあまりにも直結していて、若干の説得力不足も感じました。
短歌に関心のない人や集団活動が苦手な人にとっては、どこか現実離れした印象を与える可能性もあります。
「心を豊かにする」とは具体的にどういう感覚なのか、もう少し言語化されていれば、読後感もさらに深くなったように思います。