2025年7月6日(日) 一呼吸を置く

一呼吸を置く

アフリカの寓話に、目をなくしたカバの話があります。

ある時、一頭のカバが川を渡っていると、自分の片方の目をなくしてしまいました。カバは必死になって前を見たり後ろを見たりして、目を探し回ります。しかし、目は一向に見つからず、カバは疲れ果てて座り込んでしまいました。

しかし、しばらくすると、カバが動くことで濁っていた川の水が次第に透き通り、無事に自分の目を見つけることができました。

この寓話は、心を落ち着けることの大切さを教えてくれています。冷静になれば解決できる事柄であっても、焦っていると適切に対処するのが難しくなります。余計な時間や労力を要することもあるでしょう。

日々の仕事においても、予期せぬ問題が発生した場合には、心を一度落ち着けて冷静に対処する必要があります。

そのためには、日頃から自分の心の状態をよく観察し、心が乱れた時には一呼吸置くなどして、平常心を保つように心がけたいものです。

今日の心がけ◆心を落ち着けて仕事に臨みましょう

出典:職場の教養7月号

感想

このアフリカの寓話に描かれたカバの姿は、現代を生きる私たちにとって非常に示唆的です。

目を失くした瞬間の混乱や焦燥、そして疲れ果てて座り込むまでの流れは、誰しもが経験する「見失い」と「停滞」のメタファーとして深く心に残ります。

しかし、この寓話が特に優れているのは、「動かないこと」が結果的に「見つけること」につながるという逆説的な教訓を伝えている点です。

常に動き続けることで濁る水、つまり混乱した心が、静止することで澄み、自分自身の「目=本来あるべきもの」が見えるようになる。

この寓話は、単なる落ち着きの必要性以上に、静けさの中にこそ答えがあるという叡智を含んでいます。

また、「一呼吸を置く」という行為の象徴性が非常に美しいです。

私たちは時に、すぐに結論を出そうとし、あるいは焦って動いてしまうことで、本来見えるはずのものを見失います。

まさに、仕事や人間関係、人生のあらゆる局面で、この「一呼吸」が状況を好転させる鍵になる可能性を持っていると実感させられました。

今日の心がけとして掲げられている「心を落ち着けて仕事に臨むこと」は、単なる作業の効率化ではなく、自分自身の本質と向き合うための静けさへの招待だと感じました。

否定的な感想

この寓話が示す「動きを止めることで解決する」というメッセージは、確かに深いものがありますが、一方で現代社会の複雑性に対してはやや単純化しすぎている印象も否めません。

仕事や生活の場面では、ただ座り込んでいるだけでは解決しない問題も多く、タイミングや迅速な判断力が要求される局面もあります。

心を落ち着けることがすべての問題解決に通じるという考えは、ある意味で理想論に近く、現実の厳しさをやや軽視しているようにも思えます。

また、「心を落ち着けて仕事に臨みましょう」という今日の心がけも、その抽象性ゆえに実行に移しにくい側面があります。

実際の職場では、怒りや焦り、苛立ちを感じた瞬間に冷静さを取り戻すのは容易ではありませんし、「一呼吸を置く」だけで平常心を保てる人ばかりではありません。

この寓話に共感することはできても、それを具体的な行動にどう結びつけるのかという部分には、もう少し現実的なアプローチや補足が欲しいと感じました。

静かに座ることだけでは解決しない問題もある、というリアルな視点も必要だと思います。