もったいない
環境省の調べでは二〇二二年の日本の食品ロスの量は、四七二万トンと言われています。そのうち家庭での食品ロスは全体の半分に当たる二三六万トンです。
まだ美味しく食べられるのに、産地から日本に輸送する過程で熟しすぎたり、傷ついてしまったりしたフルーツは規格外として廃棄されます。
フルーツを扱う株式会社ドールでは、これらを「もったいないフルーツ」と命名し「もったいないフルーツプロジェクト」を立ち上げ廃棄削減を目指しました。
例えば、規格外になったバナナを「もったいないバナナ」と称して選別。その中で、まだ食べられるバナナは加工工場で追熟したり、冷凍バナナやピューレ、パウダーなどの原料に加工したりすることで生まれ変わります。
このプロジェクトは他企業とのコラボレーション商品を多く生み出しました。また、食品基準に満たなかったバナナは肥料や飼料として役立てられています。
私たちも、まだ食べられる食品や食材を粗末にせず、もったいないという気持ちと共に、感謝を込めて食品をいただきましょう。
今日の心がけ◆食品を有効活用しましょう
出典:職場の教養7月号
感想
「もったいないフルーツプロジェクト」は、単なる食品ロス対策にとどまらず、日本人の精神文化に根ざした「もったいない」という感覚を再確認させてくれる取り組みだと感じました。
フルーツが「規格外」というだけで廃棄される現実は、見た目の美しさが過剰に求められる現代社会の歪みを映しています。
しかし、ドールのような企業が本質的な価値に目を向け、形や傷にとらわれず、食べられるものを最大限に活かそうとする姿勢には強く共感を覚えます。
加工という手段を通して廃棄を回避し、さらにはコラボ商品として展開している点も素晴らしく、経済的にも循環的な利益が生まれるモデルケースになっていると思います。
これにより消費者にも「もったいない」が身近な価値観として浸透しやすくなるのではないでしょうか。
「感謝を込めて食品をいただく」という呼びかけも、食の根源にある命への敬意を思い出させてくれました。
今日の心がけとして食品の有効活用を促すメッセージは、日常の中での実践につながりやすく、とても意義深いです。
否定的な感想
このプロジェクトの存在自体が、いかに日本社会が「見た目」にこだわりすぎ、食べ物の本質を見失ってきたかという証でもあるように思えます。
「規格外」とされるフルーツがそもそもなぜ流通できないのかという根本の疑問に対しては、あまり踏み込まれていない印象を受けました。
企業が「もったいない」と後から取り繕う形での対応をしているという点で、やや消費者や流通側の自己満足に見える側面も否めません。
また、「もったいない」という言葉が商品名やキャンペーンに使われることで、かえって表面的なエシカル消費にとどまり、日々の購買行動の中で深く根ざす意識にならない懸念もあります。
消費者側にも「安く買えるならそれでいい」という打算的な動機でプロジェクトを受け入れる人が多いとしたら、それは本来の「感謝していただく」という精神からずれてしまうのではないかとも感じました。
持続可能性を目指すならば、社会全体の価値観や基準を見直すような動きにもつながってほしいと思います。