2025年7月29日(火) サルスベリ

サルスベリ

七月に咲く花として、濃いピンクのサルスベリを思い浮かべる人も多いでしょう。百日間咲き続けることから、「百日紅」とも呼ばれます。

サルスベリは、木肌がつるつるとしていて、猿が木に登ろうとしても滑ってしまいそうに見えることからその名が付いたと言われています。

Aさんの住む街には、道の両側に約四百本のサルスベリが咲いている並木道があります。普段は車で通り過ぎることが多いのですが、ある涼しい朝、その並木道を歩いてみることにしました。

木の下で花の一つひとつを観察してみると、縮れたようにくしゃっとした花びらが六枚付いており、さらに花びらの付け根は糸状になっています。それが枝先に塊となっているため、全体として大きな印象を与えていることに気づきました。

Aさんは、サルスベリの花をじっくり観察することで新たな発見をしました。私たちも普段何気なく見ているものをもっとじっくり見つめてみると、今まで気づかなかった新たな発見があるかもしれません。

今日の心がけ◆時にはじっくりと見つめてみましょう

出典:職場の教養7月号

感想

サルスベリの並木道を歩くAさんの体験は、私たちに「足を止めることの大切さ」を静かに教えてくれているように感じました。

普段は車で通り過ぎてしまう景色が、ゆっくり歩くことでまったく違った表情を見せてくれる――それはまるで、忙しい日々のなかで見過ごしてしまっている小さな幸せや美しさが、ふとした瞬間に姿を現すかのようです。

特に、花びらの「縮れたようにくしゃっとした」質感や「糸状の付け根」という細部にまで目を向けたAさんの観察には、感動すら覚えました。

それは自然に対する敬意でもあり、人の感性がどこまで深くなれるのかという可能性を示しています。

今日の心がけにあるように、「じっくりと見つめる」ことは、対象だけでなく、自分自身の心をも澄ませる行為だと思います。

この文章は、日常に潜む美を再発見するための小さな指南書のように感じられました。

否定的な感想

文章全体がやや観察描写に偏りすぎていて、Aさんの感情や心の動きがもう少しあってもよかったのではないかと感じました。

たとえば、なぜその朝に限って歩こうと思ったのか、その時どんな気持ちだったのかという背景があれば、読者としてもより深く共感できたと思います。

並木道を歩くという行為の中にある個人的な物語が少し薄く、自然の描写の美しさに比して人間の存在感が霞んでしまった印象です。

また、サルスベリの花の細部についての記述はとても丁寧で興味深いのですが、それが「新たな発見」だと感じた理由がもう一歩踏み込んで語られていれば、文章全体がさらに豊かになったように思います。

自然との出会いの中で自分の内面がどう変化したのか、その余韻のようなものがもう少し描かれていれば、読後の感動がより深まったのではないでしょうか。