どうやって作ったの
Fさんはある日、幼い長男と一緒に地下鉄を利用しました。地上から階段やエスカレーターを使いながら、地下へと進んでいく中、長男は「どこまで潜るの?」「どうやってこれを作ったの?」と興味津々です。
〈言われてみれば、その通りだな。地下にこれだけのものを作るのは凄いことだ〉と思ったFさんは、地下鉄の歴史や構造について調べてみました。
日本で初めて本格的な地下鉄が開業したのは一九二七年で、東京の上野駅と浅草駅を結ぶ約二・二キロの路線が運行を開始しました。
それから約百年が経過した現在は、各地で通勤や通学など、私たちの生活を支える交通網として欠かせない存在となっています。
私たちが当たり前のように利用している生活インフラも、すべては先人の努力や試行錯誤の末に築かれ、定着したものです。
そのことに感謝して、自分も豊かな社会生活を支える一翼を担う働きをしていることに誇りを持ちながら、日々を過ごしていきたいものです。
今日の心がけ◆先達の働きに感謝しましょう
出典：職場の教養10月号
感想
この話を読んでまず感じたのは、子どもの素朴な疑問が、大人にとっての気づきや感謝の契機になっているという点の尊さです。
Fさんが息子の「どうやってこれを作ったの？」という問いに触発されて、地下鉄の歴史や構造を調べたという行為には、知的好奇心と敬意の両方が感じられました。
日々無意識に使っている地下鉄も、かつては「存在しなかった」もの。
それをゼロから築き上げた先人たちの努力に目を向ける姿勢は、非常に成熟した感性だと思います。
また、「当たり前の裏には誰かの働きがある」という視点は、現代社会で忘れがちな意識を改めて思い出させてくれます。
道路、電気、水道、交通機関といったインフラは、誰かの汗と時間、そして時には命をかけた挑戦によって成り立っている。
その事実に思いを馳せることは、感謝だけでなく、自分の仕事に対する誇りにもつながるのではないでしょうか。
今日の心がけ「先達の働きに感謝しましょう」は、単なる感謝のすすめではなく、自分自身の働きの意義を再確認することでもあると感じました。
否定的な感想
この文章はやや美化された視点に傾きすぎているようにも思えます。
確かに地下鉄の歴史やインフラ整備には多大な努力があったことは間違いありませんが、そうした開発の裏には労働環境の過酷さや住民との摩擦、予算の確保といった複雑な現実も存在しています。
それらに目を向けず、「先人の努力」という言葉で一括りにしてしまうのは、やや一面的ではないでしょうか。
また、「自分も豊かな社会生活を支える一翼を担っている」という表現も、読者に対してある種の義務感やプレッシャーを与えかねません。
すべての人がインフラのように“目に見える形”で社会を支えているわけではありませんし、日々の生活をこなすだけで精一杯な人もいます。
そうした多様な生き方や働き方に対しても、同じように「誇り」を持てるような言葉が添えられていたら、より多くの人の心に届く文章になっていたのではと感じます。
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