職場での情報伝達
報告・連絡・相談、いわゆる「ホウレンソウ」は、一般的に部下から上司へ行なうべき行動として語られることが多いのではないでしょうか。
しかし、「部下から上司へ」という視点が強調されすぎると、上司が部下に対して果たすべき説明や情報提供の責任が軽視されてしまいます。上司はその立場において、部下に対して明確かつ具体的な説明を行なうべき場面が多いはずです。
例えば、上司が「この程度のことは言わなくても分かるだろう」と考え、業務の内容や背景を十分に伝えずに指示を出した場合、それが現場で誤解や混乱を招く原因となることがあります。
目的や方向性が共有されないまま業務が始まると、上司と部下の間で認識のズレが生じ、結果として無駄な作業が発生することもあるでしょう。また、業務の変更点について上司が適切に伝達しない場合にも、同様の混乱が起こり得ます。
部下の立場から「もっと丁寧に説明してください」と上司に進言するのは、難しいものです。だからこそ、上司自身が自らの姿勢を顧みることが重要なのです。
今日の心がけ◆情報共有の意識を高めましょう
出典：職場の教養11月号
感想
このお話が非常に的確なのは、「ホウレンソウ」という言葉に潜む上下関係の偏りを見直し、情報の流れを双方向的に捉え直している点です。
多くの職場では、「報告・連絡・相談」は部下側の責任として定着していますが、実際の現場で真に円滑なコミュニケーションを成立させるためには、上司の側の説明責任こそが大きな鍵を握っているという指摘は非常に重要です。
特に、「この程度のことは言わなくても分かるだろう」という思い込みがいかに現場の混乱を招くか、という具体的な描写は、多くの人にとって身に覚えのある場面ではないでしょうか。
上司が発信者としての責任を持ち、目的や背景を丁寧に共有することは、ただ業務効率を上げるためだけでなく、部下の安心感や信頼関係の構築にもつながります。
「今日の心がけ」にある「情報共有の意識を高めましょう」は、まさにこのテーマの核心であり、単なるコミュニケーションスキルではなく、組織全体の文化や信頼の基盤を支える姿勢として捉えるべきだと感じました。
否定的な感想
この文章には現場の実情に対してやや理想論的な一面もあるように思います。
上司が「情報共有の責任を果たすべき」という主張はもっともですが、実際にはその上司も多くの業務に追われ、全てを丁寧に説明する余裕がない場合も多いのが現実です。
また、すべてを逐一説明しようとすると、逆に部下の自主性や判断力が損なわれる可能性もあるため、情報提供と任せるバランスが求められる点が議論から抜け落ちているようにも感じられました。
さらに、「部下の立場から上司に進言するのは難しい」という記述に共感しつつも、それを乗り越えてこそ職場が変わるという視点があってもよかったのではないかと思います。
上司の責任を強調するだけでなく、部下側にも「聞く力」「確認する姿勢」を促すことで、より建設的な提案になったかもしれません。
上司と部下の双方が「伝える力」と「受け取る力」の両方を意識することが、職場のコミュニケーションの本質ではないでしょうか。
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