ウォーキングでの出会い
Aさんは健康維持のため、早朝に近所の公園でウォーキングを始めました。
いつからか、杖を突いて公園をゆっくり一周する高齢の人と顔を合わせるようになりました。同じ時間帯に会うその姿に、親しみを感じるようになりました。
ある日、Aさんが話しかけると、その人は穏やかな口調で、「本当は日中に歩きたいのですが、人の多い時間帯は迷惑をかけてしまうので…」。
そう言いながらも、「けれど早朝は空気が澄んでいて、体の調子も良くなるんですよ」と、前向きな笑顔を見せてくれました。
自分の希望より周囲への配慮を優先する心遣いに、Aさんは感動しました。そして、望まない状況であっても前向きな姿勢に切り替える大切さを学んだのです。
Aさんは、日頃から自分のペースや考え方を家族や職場の人に押し付けてはいなかっただろうかと思い至りました。
そしてAさんは、これからは他人の意見にも耳を傾け、自分の意に沿わないことがあっても、肯定的に受け止めようと決意したのです。
今日の心がけ◆明るく受け止めましょう
出典：職場の教養11月号
感想
この話にあるAさんと高齢の方との出会いは、日常の中にあるささやかな奇跡のように感じられました。
朝の公園という静かな空間で交わされる短いやり取りの中に、思いやりや人生経験の重みが凝縮されていて、読むだけで胸の奥がじんわりと温かくなります。
特に、「日中は迷惑になるから」と自らの都合を抑えてでも他人を気遣う高齢者の言葉には、現代に失われがちな慎ましさと美徳が宿っていると感じました。
その一方で、ただ我慢するだけでなく、「早朝の空気は澄んでいて、体の調子も良くなるんですよ」と明るく話す姿からは、与えられた環境を前向きに捉えるしなやかな強さが伝わってきます。
こうした姿勢は、困難に対してどう向き合うかという人生の態度そのものであり、Aさんが自分を省みるきっかけとなったのも納得できます。
「今日の心がけ◆明るく受け止めましょう」という言葉も、単なるポジティブ思考ではなく、相手を思う心、状況を受け入れる柔軟さを育むための大切な指針として響いてきました。
他人とのさりげない出会いの中に、自分を変える力が潜んでいる。
そんな気づきをもたらしてくれる、深い学びのあるエピソードです。
否定的な感想
この話にはある種の理想化が色濃く感じられました。
高齢の方の「迷惑をかけてしまうから日中は歩かない」という言葉には、少し切ない現実もにじんでいて、本来であれば社会の側がもっと寛容であるべきではないか、という問いを突きつけられます。
にもかかわらず、そこを美談として処理してしまうと、むしろ「弱者が自ら遠慮することで秩序を保つ」ことを美徳化してしまう危うさもあると感じました。
また、Aさんのように相手の振る舞いから即座に自己反省し、すぐに肯定的な受け止め方へと舵を切るという展開も、少々できすぎた感があります。
人の価値観や態度はそう簡単には変わらないものであり、「明るく受け止める」ことを正解のように描いてしまうと、否定的な感情や不満を持つこと自体が悪いことだと捉えられかねません。
さらに、職場や家庭におけるAさんの反省に関しても、具体性が薄く、抽象的な“気づき”に終始している点が惜しまれます。
もしこの気づきを本当に活かしたいならば、自分の中でどのような行動変容が必要なのかをもっと掘り下げる必要があるのではないかと思いました。
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