2025年12月19日(金) 口をついて出る

口をついて出る

サラリーマンのTさんが、職場の行事でスピーチを依頼されたときのことです。

上司にアドバイスを求めると、「話したいことを要約するのではなく、話す内容を一字一句、句読点に至るまで完全に原稿にするように」と指示されました。

Tさんは内心〈面倒だな〉と感じながらも、言われた通りに原稿を作成しました。すると次に上司は、「原稿を何度も繰り返し読むように」と助言したのです。

実際に声に出して原稿を読んでみると、しっくりこない言葉や、発音しづらい言い回し、息継ぎが難しい箇所が見つかり、その都度修正を加えていきました。

やがて、ほとんど原稿を見なくても話せるようになった頃、上司は最後の助言として「本番では原稿を持たないように」と指示しました。

戸惑いながらもTさんはその教えに従い、本番に臨みました。すると、自分でも驚くほど、言いたいことがスラスラと口をついて出てきたのです。

繰り返し練習して身につけたら、それにとらわれず、伸び伸びと実践したTさん。スピーチ原稿の作成を通じて、物事を修得するためのコツを学んだのでした。

今日の心がけ◆仕事のスキルを磨きましょう

出典:職場の教養12月号

感想

このお話は、スピーチという一つの出来事を通じて、仕事のスキル習得の本質を描き出しており、とても印象深く感じました。

特に、「一字一句まで原稿を書く」「声に出して読む」「最終的には原稿を持たない」という一連の過程は、一見すると古風で回りくどいように思えますが、その中に「準備は自由のためにある」という深い教訓が込められていると感じます。

Tさんが、原稿に忠実に練習したことで、最終的にはそれに縛られず、自由に表現できたという体験は、あらゆる仕事の場面に応用できる普遍的な真理だと思います。

また、上司の指導も非常に的確で、単に「頑張れ」ではなく、段階的にスキルを育てる道筋を示している点が素晴らしいです。

こうした丁寧な指導に触れたTさんの戸惑いと成長の過程は、読者にとっても共感を呼び、励ましとなるでしょう。

特に、最初の〈面倒だな〉という感情も包み隠さず描かれていることで、学びの過程がよりリアルに伝わってきます。

誰しもが「やらされ感」を抱きつつも、その中で本質に気づき、自分の力として体得していく。

そのプロセスこそが、まさに「仕事のスキルを磨く」ことの本質だと感じさせられました。

否定的な感想

この話にはやや理想化された「成功体験」だけが強調されている印象もあります。

たとえば、Tさんがスピーチ本番で「驚くほどスラスラと話せた」という展開は、実際の現場ではなかなかそう上手くいかないケースも多く、現実の難しさや不安、失敗の可能性に対する視点が希薄です。

すべてが計画通りに進むような物語は、美しい反面、読み手に「こうでなければならない」という無言のプレッシャーを与えてしまう危険もあると感じました。

また、上司の指導が確かに的確である一方で、その手法が「絶対に正しい」と思わせるような描写には、少し違和感もあります。

人には学び方の個人差があり、一字一句書き出すことで逆に緊張してしまう人や、自分の言葉で話したほうが自然に力を発揮できる人もいます。

Tさんの成功が、他の誰にでも通用する普遍的な方法として語られてしまうと、柔軟性を欠いた見方になってしまう恐れがあります。

さらに言えば、「物事を修得するには、まず型を身につけ、そこから自由になる」というテーマは奥深い一方で、それをスピーチという限定的な場面だけで語ってしまうのは、少し物足りなくも感じました。

せっかく仕事のスキル全般に通じる重要な視点があるのだから、もう一歩広く、他の仕事場面への応用にも触れていれば、より読者にとって実用的な学びになったかもしれません。

感想がいまいちピンとこない方は…

「なんかしっくりこないんだよなぁ」「でもなかなか思いつかない…」そんな時は、感想文ジェネレーターをお試しください。

あなたのお好みのテイスト・文字数で職場の教養の感想文を生成できます!