2025年7月27日(日) 真の文明

真の文明

明治時代初期に起きた「足尾銅山鉱毒事件」は、日本が近代化を目指して経済発展に力を注ぐ最中に発生した、我が国における最初の公害と言われています。

銅を製錬・精製する際の排煙や排水に含まれる有害物質により、自然環境や農作物、さらには飲み水や食べ物を通じて人体にも深刻な影響を及ぼしました。

被害住民たちは、鉱山の操業停止や損害賠償を求める運動を展開しましたが、国益を優先した国や企業の対応は十分ではありませんでした。

この事件を告発し、被害者救済に一生を捧げたのが政治家の田中正造です。彼は百年以上前に自然との共生を訴え「真の文明は 山を荒らさず 川を荒らさず 村を破らず 人を殺さざるべし」という言葉を残しています。

たとえ経済の発展と安定が「貧困や飢餓をなくす」ことにつながっていても、それが「自然の破壊」と引き換えに成り立つような開発は望ましくありません。

自然や人々に有益である持続可能な未来を築くためにも、一人ひとりが「真の文明」づくりに適っているのかという意識を持って仕事に臨みたいものです。

今日の心がけ◆自然環境との共存を意識しましょう

出典:職場の教養7月号

感想

このお話は、明治時代初期の足尾銅山鉱毒事件を通じて、近代化と経済発展の裏で軽視されてきた自然環境や人々の暮らしに対する警鐘を鳴らしています。

特に田中正造の言葉、「真の文明は 山を荒らさず 川を荒らさず 村を破らず 人を殺さざるべし」は、時代を超えて胸に響きます。

経済成長がもたらす豊かさの中で、見過ごされがちな自然破壊や社会的な弱者の声に目を向けることの重要性を、強く思い出させてくれる内容です。

また、今日の心がけで示された“自然環境との共存を意識しましょう”という提言も、単なる理念ではなく、私たちの行動指針として明確に響いてきます。

現代においても、環境負荷の高い産業活動や都市開発が止むことなく続く中で、今一度、文明のあり方を見つめ直すことの大切さを再確認させられます。

一人ひとりの意識と選択が、未来の「文明」を形作るという責任感を、文章からひしひしと感じました。

否定的な感想

この文章には現代との接続がやや弱い印象も受けました。

足尾銅山鉱毒事件という歴史的な出来事は非常に重要ですが、それが現代の私たちの生活や選択とどう結びついているのか、もう少し踏み込んで示してほしかったとも思います。

たとえば、今日の産業や消費活動がどのように環境破壊や社会的不公正を引き起こしているのか、具体的な例や提案が加わることで、より現実味を帯びたメッセージになったのではないでしょうか。

また、「真の文明」という美しい理念が提示されているにもかかわらず、それがどのようにして実現可能なのかという点には、曖昧さが残ります。

文明のあり方を問い直すのは重要ですが、それだけで終わると“理想論”に留まってしまいがちです。

現代の複雑な社会構造の中で、個人が「真の文明」にどう関わりうるのかという視点も、今後の課題として深めていく必要があると感じました。