自分の原点を知る
お墓や仏壇に手を合わせ、亡き祖先に思いを馳せる、そんな時間を持つ人も多いのではないでしょうか。こうした行動は、心を落ち着かせるだけでなく、自分自身のこれまでを振り返るきっかけにもなります。
ある人は、久しぶりに帰省した際、祖父母の仏前で手を合わせながら、「自分が今ここにいるのは、祖父母をはじめ、多くの先祖がいたからだ」と改めて感じ、感謝の気持ちを深めたと言います。
祖先を思うことは、単に故人を偲ぶだけではありません。自分のルーツや、代々受け継がれてきた思いを知ることにもつながります。
また、長い歴史を持つ企業であれば、創業の背景やそこに込められた想いを知ることは重要です。企業の歩みを振り返ることで、仕事において大切にすべき価値観に気づき、今後の方向性を明確にするヒントにもなるでしょう。
日々の忙しさの中で、つい見失いがちなものがあります。だからこそ、祖先への感謝を通して、自分の原点を再確認する時間を持ってみてはいかがでしょうか。
今日の心がけ◆自分を見つめ直す時間を作りましょう
出典：職場の教養10月号
感想
この話には、目まぐるしい現代社会のなかで忘れがちな「立ち止まることの意味」が、穏やかに、しかし確かな力で語られていると感じました。
祖先への感謝という行為は、決して過去への懐古ではなく、自分という存在の連続性を認識する行為です。
仏壇に手を合わせるという所作ひとつとっても、そこには自分を育てた時間や人、想いとのつながりが自然と立ち現れる。
日常に埋もれてしまう「なぜ今の自分があるのか」という問いに、静かに光を当てるような語り口に、心が洗われるような感覚を覚えました。
また、「企業の原点」にも視点を広げている点がとても興味深く感じられました。創業者の思い、理念、それが今の組織にどう受け継がれているか。
そうした歴史を知ることは、ただの情報収集ではなく、自分がその一員として何を体現すべきかを見つける手がかりにもなります。
人であれ、組織であれ、「原点に立ち返る」という行為は、迷いや停滞の中にあるときこそ、大きな意味を持つのだと思います。
「今日の心がけ」として提示された「自分を見つめ直す時間を作りましょう」は、現代を生きる私たちへの静かな、しかし力強い提案だと感じました。
否定的な感想
この話が描く「原点回帰」は、やや一面的に感じられる部分もありました。
特に、祖先や仏壇への感謝を前提とする価値観は、宗教観や家庭環境により馴染みのない人にとっては、かえって疎外感を生む恐れもあります。
「仏前に手を合わせる」という行動が、あたかも原点を思い出す最良の手段であるかのように描かれていることには、もう少し多様性への配慮が欲しかったと感じました。
人によっては、自分の原点を知る手がかりが自然との対話であったり、芸術や日記であったりすることもあるはずです。
また、「企業の歴史を知る」ことを原点と結びつける視点は新鮮ではあるものの、実際には企業が必ずしも創業の理念を現在まで一貫して保っているとは限りません。
時には、その「歴史」自体が形骸化し、現場の従業員にとっては無関係に映ることもあるでしょう。
その意味で、原点を振り返ることの意義を過度に持ち上げるのではなく、「どのように振り返るか」「何を今の自分に引き寄せられるか」という視点の方が重要だったのではないかと思います。
ただの懐古に終わらせず、現在と未来に橋をかけるような語りがあれば、より深い共感を呼べたかもしれません。
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