共感力
十二月は、一年の締めくくりであると同時に、新しい年を迎える準備をする月です。忙しさの中で人と触れ合う機会が減り、孤独を感じる人もいるでしょう。
Aさんは、受験を控えている娘が、勉強もせずゴロゴロしている姿を見て「しっかり勉強しなさい」と強めに言ってしまったことがありました。後で反省し、それからはなるべく寄り添うことを心がけていました。
ある夜、不安で眠れないのか涙ぐんでいる娘の姿を目撃しました。すぐにAさんは「明日のことを考えると不安になるよね。お母さんもそうだよ。でも大丈夫、一緒にここまできたんだから安心して眠ろう」と声をかけました。
すると娘は笑顔を取り戻し、分かってくれる人がいると安心したようでした。その後は、以前より落ち着いて勉強に取り組めるようになったのです。
Aさんはこの経験を通じて、状況を分かってくれる人がいるというだけで、孤独感が和らぎ、気持ちを立て直すことができると学んだのでした。
相手に共感されることで安心感が生まれ、本来の力を発揮できるのでしょう。
今日の心がけ◆相手の気持ちに寄り添いましょう
出典:職場の教養12月号
感想
この話に描かれたAさんの姿勢は、共感という行為がどれほど深く、人の心に灯をともすかを改めて気づかせてくれました。
娘さんが「勉強しなさい」と言われて反発する姿は、ただの怠けではなく、不安や孤独といった内面の揺らぎの表れだったのだと思います。
Aさんがそのことに気づき、責める姿勢から寄り添う姿勢へと切り替えた瞬間に、母親としての成熟と深い愛情が感じられました。
夜、涙ぐむ娘の心にそっと寄り添い、「不安になるよね」とまず感情を受け止めてあげたことは、言葉以上の安心を与えたはずです。
このやり取りから見えてくるのは、共感とは相手の問題を解決することではなく、「あなたはひとりじゃない」と伝える行為そのものだということです。
受験という大きな壁の前で孤独感に押しつぶされそうになっていた娘さんにとって、母親の共感は心の支えとなり、結果的に本来の力を発揮するための土台になったのでしょう。
「今日の心がけ」にある“相手の気持ちに寄り添う”という言葉は、単なる優しさではなく、人を強くし前へ進ませる力そのものだと強く感じました。
否定的な感想
この話は非常に美しい形でまとめられすぎており、現実の子育ての複雑さをやや単純化している印象もあります。
共感の重要性は言うまでもありませんが、常に寄り添う姿勢を取ることが最適解になるとは限りません。
ときには厳しさが必要だったり、親自身が精神的な余裕を持てずに共感どころではない場合も多いでしょう。
「寄り添えば落ち着いて勉強するようになった」という流れは理想的ですが、実際には共感しても行動が変わらないケースも頻繁に起こります。
その点では、共感という行為が万能の解決策であるかのように描かれている点に、少し引っかかりを覚えました。
また、Aさん自身が感じていたストレスや葛藤については、あまり深く語られていません。
親が子どもに寄り添うには、自分自身の感情や疲労と向き合う必要があります。
「共感」は簡単ではなく、むしろ大きなエネルギーを消耗します。
それを乗り越えて初めて可能になる行為であるにもかかわらず、その背景が描かれていないため、読者によっては「もっと優しくしてあげればいい」と自分を追い詰めてしまう危険すらあるように感じました。
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