身近な道日
身近な道具の中には、目立たないながらも私たちの生活の中で重要な役割を果たしているものがあります。
その一例として挙げられるのが、体温計です。体温は、日常生活において体調を客観的に示すバロメーターであり、体温計が身近にあれば、必要な判断を迅速に下すことができ、安心感を得られます。
日本では、第一次世界大戦中に体温計の輸入が途絶えたことをきっかけに、北里柴三郎(きたさと・しばさぶろう)博士をはじめとする当時の医師らが国産体温計の開発に取り組みました。その尽力がなければ、手軽に体温を測る習慣は根づかなかったかもしれません。
現在、当たり前のように使われている道具の多くは、社会的な課題を解決したいという開発者の思いが込められ、それぞれに完成までのストーリーがあります。
私たちの日常業務もまた、何らかの形で社会貢献や社会課題の解決につながっているはずです。業務の意義を折に触れて見つめ直すことは、仕事への理解と意欲を深めるうえで大切なことではないでしょうか。
今日の心がけ◆業務の意義を意識しましょう
出典：職場の教養12月号
感想
このお話には、何気ない日常の道具が持つ意味を再認識させられる力がありました。
とくに体温計という、誰もが一度は使ったことのあるアイテムが、かつての社会的危機の中で生まれた「必要性の産物」であり、そこに込められた開発者たちの思いがあるという視点は、物の背景にある物語を感じさせてくれます。
北里柴三郎博士の名前が出てくることで、歴史的な信頼と重みも加わり、「ただの便利な道具」が「日本社会を支える文化の一部」として位置づけられるのです。
さらに「私たちの日常業務もまた、社会貢献や社会課題の解決につながっているはずです」という一文には、働くすべての人に対する静かなエールが感じられました。
直接的に社会貢献を意識する場面が少なくても、その仕事が誰かの安心や生活を支えている可能性があるという視点は、仕事に誇りを持つきっかけになります。
「今日の心がけ」としての「業務の意義を意識しましょう」は、モチベーションの核になるメッセージです。
否定的な感想
この文章が提示する「道具に込められた開発者の思い」や「業務の意義」に対して、やや理想化されすぎた印象も否めません。
体温計のように社会的な意義が明確な道具であれば、そこに込められた思いや開発の背景に感謝の念を持ちやすいですが、すべての道具や業務にそうした「美談」があるとは限りません。
日々の業務が単調で成果が見えにくいものである場合、「意義を意識しましょう」と言われても、それが空虚な励ましに聞こえてしまうこともあるでしょう。
また、歴史的な偉人を引き合いに出すことで、逆に読者との距離を感じさせてしまう懸念もあります。
北里博士のような人物の行動は立派ですが、自分の業務と重ねるにはギャップが大きく、「そんな大きなことはできない」と逆効果になってしまう可能性もあります。
業務の意義を伝えるなら、もっと身近で現代的な事例を挙げた方が、読者の共感を得やすかったのではないかと感じました。
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