心の垣根
Aさんは、職場で行なう朝礼の運営責任者に選ばれました。
意欲的に朝礼で運営をしてきましたが、最近は代わり映えのしない朝礼が続ていると感じ、〈皆が楽しく参加する朝礼にしたい〉と考えました。
毎日の朝礼で原因を探っていると、『職場の教養』の感想を述べる担当者が、おざなりの感想のみを述べていることに気づきました。
かつては、政治や社会の流行などに独特な視点から見解を述べていた先輩や、主婦の視点から思いがけない意見を述べていた後輩も、魅力的な観点から感想を述べることがなくなっていたのです。
そこでAさんは〈遠慮なく、自分の意見を言える環境をつくろう〉と思い立ち、週に一度、少人数のグループに分かれて全員が感想を述べ合うようにしました。
こうした機会を設けると、余分な心の垣根が解消され、溌溂とした感想が聞かれるようになり、全社員の前でもイキイキと感想を述べるようになりました。
単調さを変えるには、小さな心の垣根を除くことが大切なのかもしれません。
今日の心がけ◆話しやすい職場環境を目指しましょう
出典:職場の教養7月号
感想
この話から感じた最も印象深い点は、「意見を言いやすい環境づくり」が、日常の雰囲気をこんなにも変えるという事実です。
Aさんのように、問題の根本を探り、表面的な変化ではなく“心の垣根”という見えない壁に目を向けた姿勢はとても誠実で、リーダーシップの本質を突いているように思いました。
形式だけが続いてしまいがちな職場の習慣に、意義と活力を取り戻すためには、誰かが「本音で話せる場」を仕掛ける必要があり、その役割をAさんが担ったことが、非常に意義深く感じます。
「話しやすい職場環境」は、単に空気が柔らかいというだけではなく、自己表現を許容し合う文化の上に成り立つものであり、それは日々の積み重ねからしか生まれない。
Aさんの取り組みは、その積み重ねの第一歩であり、小さな変化がやがて全体の空気を変えていくという希望を感じさせてくれました。
今日の心がけ「話しやすい職場環境を目指しましょう」は、単なる目標ではなく、共に働く人々への思いやりの姿勢そのものを表しています。
否定的な感想
「心の垣根を取り除く」ことの難しさや、誰もが自分の意見を自由に述べられるようになるまでの時間や心の負担については、あまり語られていないと感じました。
Aさんのように感受性があり、周囲を観察しながら行動に移せる人は貴重ですが、そうではない人にとっては、週に一度のグループ分けすらもプレッシャーや負担になってしまう場合がある。
全員が「イキイキとした感想」を述べられるようになったという展開にはやや理想化された印象を受けます。
また、過去の先輩や後輩の魅力的な感想と比較することで、今の状況を「つまらない」と断じてしまうのは少し危うい姿勢にも思えます。
変化しないことには理由があり、日々の忙しさや個々の事情が反映されているかもしれません。
個々の意見を引き出すためには、単に「話しやすさ」をつくるだけでなく、誰の感想にも価値があるという前提を、もっと明確に示すことも必要だと感じました。
形式を変えることよりも、意識を変えることのほうが難しく、本質的なのだと思います。