意図を伝える
ある企業で営業職を務めるTさんは、長い間、一緒に仕事をしてきた同僚が退職したため、新しいパートナーを迎えて仕事をすることになりました。
はじめは、お互いに気を遣いながら仕事を進めていましたが、しばらく経つと二人の関係がギクシャクして、Tさんは相手に不満を抱くようになりました。
かつてのパートナーであれば、伝えたいことや依頼したいことが難なく通じていました。しかし、それが新任者には上手く伝わらないのです。
ある日、Tさんは思い切って率直にそのことを伝えたところ、こちらの意図が充分に理解されていなかったことがわかりました。
新任者への配慮が足りなかったことを反省したTさんは、伝えるべきことを、まず文書にしてその意図を明確にし、伝達後には確認をするように努めました。
この作業は、やり始めこそ大変でしたが、しばらくするとスムーズにやり取りができるようになり、やがて文書も確認も不要になったといいます。口頭で説明するだけでなく、自分の意図を適切に伝える大切さを痛感したTさんでした。
今日の心がけ◆思いを適切に伝えましょう
出典：職場の教養9月号
感想
この話を通して、Tさんのように「かつてのやり方が通用しない状況」に直面したとき、丁寧に見直し、行動を変えていく姿勢には深く共感しました。
特に、ただ「相手に不満を持つ」だけで終わらず、自らの伝え方に課題があるのではと省みて、文書化という具体的な手段を試みた点が印象的です。
人は長く同じ関係性に慣れていると、コミュニケーションに無自覚な省略や甘えが生じがちです。
Tさんはそれを脱却し、「相手が変われば伝え方も変えるべきだ」という本質に気づいた。
その気づきは、単なる業務上の工夫にとどまらず、対人関係全般に応用できる普遍的な知恵だと感じました。
「今日の心がけ」にある“思いを適切に伝える”という言葉の重みも、改めて感じさせられます。
誤解や衝突の多くは、感情や意図が「伝わっていない」ことに起因する。
その意味で、この話は誰もが抱える日常的な課題へのヒントを与えてくれる貴重なエピソードです。
否定的な感想
「文書にして伝える」というTさんの解決法がスムーズに機能し始めたという流れには、やや理想化された印象も受けました。
現実の職場では、文書化する時間も取れず、また受け取る側の理解力やモチベーションにも大きく左右されるため、簡単には効果が出ないことも少なくありません。
また、Tさんの視点に終始しており、新任者側の困惑やプレッシャーに対する配慮が薄いとも感じました。
つまり、「伝える側の努力」だけが強調されているものの、「受け取る側にとっての理解しやすさ」や「受け取り方の多様性」には触れていません。
真に適切な伝達とは、一方的に工夫することではなく、双方向の歩み寄りが必要です。
その意味で、「適切に伝える」ことの大切さは理解しつつも、それが常に報われるわけではない現実や、そのプロセスに潜む葛藤や摩擦についても、もう少し踏み込んだ視点があってもよかったと感じました。
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