二者択一
「アメリカ建国の父」と称されるベンジャミン・フランクリンは、A案にするかB案にするか迷ったとき、それぞれの案の賛成意見・反対意見を思いつく限り書き出し、賛成意見が多く残っている方を採用することにしていたそうです。
フランクリンが知人に宛てたという、この手紙の話を知ったTさんは、二者択一に迷った場合は、この方法をお手本にするようになりました。
頭の中で考えているだけでは堂々巡りになりがちなことも、書き出して可視化することで頭の整理に役立ちます。また、両案の賛成意見・反対意見を書き出すことで、より客観的に物事を判断できるようになります。
ただし、フランクリンが手紙で述べているように、一口に賛成意見・反対意見といっても、その内容の重要性には大小軽重があります。例えば一つの賛成が二つの反対に相当すると考えられる場合は、この三つを消して調整します。
フランクリンのこの方法だけですべての問題が解決するわけではありませんが、円滑な日常生活を送るために役立つ有効な手段の一つだと言えるでしょう。
今日の心がけ◆書き出して整理してみましょう
出典:職場の教養2月号
感想
ベンジャミン・フランクリンが実践していた「心の代数」とも呼べるこの意思決定術は、現代に生きる私たちにとっても非常に示唆に富む知恵です。
人生は選択の連続であり、特に大きな岐路に立ったとき、私たちの脳内は感情や期待、そして不安が複雑に絡み合い、さながら霧の中を歩むような状態に陥ります。
Tさんがこの方法を取り入れたことで得た「客観性」という視点は、主観という主観の檻から自分を解き放ち、一段高い場所から状況を俯瞰するための強力な武器となります。
特筆すべきは、単なる項目の数だけで判断せず、意見の「重み」を考慮して相殺させるという調整のプロセスです。
これは、論理的な計算の中に、人間らしい価値観や優先順位を組み込む作業に他なりません。
どれほど些細なメリットであっても、それが自分の魂にとって譲れないものであれば、複数のデメリットを凌駕することがあります。
この「書き出す」という行為は、自分の心の奥底に眠る「本当に大切にしたい価値」を浮き彫りにする、自己対話の儀式でもあると感じます。
今日の心がけにある「書き出して整理してみましょう」という言葉は、情報過多な現代において、精神の平穏を保つための処方箋です。
可視化することで、漠然とした不安は「具体的な課題」へと姿を変えます。
迷いを消すことはできなくても、迷いと正対する覚悟を与えてくれる。フランクリンの知恵は、私たちが自分自身の人生の舵をしっかりと握るための、静かな、しかし力強いエールのように響きます。
否定的な感想
このフランクリン流の意思決定術を絶対的な正解として盲信することには、危うさも孕んでいると感じざるを得ません。
この手法は極めて論理的で理性的ですが、人間が本来持っている「直感」や「野生の勘」といった、言葉にできない衝動を切り捨ててしまうリスクがあるからです。
全ての要素を書き出し、天秤にかけて数値を調整するプロセスに没頭しすぎると、心が本当に求めている「理屈抜きのワクワク感」や「説明のつかない違和感」が、合理性の名の下に抹殺されてしまう恐れがあります。
また、メリットとデメリットを相殺させるという作業は、一見公平に見えて、実は「自分の都合の良いように重み付けを変えてしまう」という自己正当化の温床にもなり得ます。
結局のところ、自分の望む結論を導き出すために、特定の項目の重要度を意図的に高く見積もってしまうというバイアスからは逃れにくいのです。
このような場合、書き出す作業は客観的な判断材料ではなく、単なる「後付けの理由探し」に変質してしまいます。
日常生活における小さな選択であれば有効でしょうが、愛や信頼、あるいは直感的なリスク回避が求められる場面において、この代数学的な手法がどこまで通用するのかは疑問です。
論理で割り切れない感情の揺らぎこそが人間らしさであるとするならば、全てを白日の下に晒し、機械的に処理しようとする姿勢は、時に人生から予期せぬ飛躍や情熱的な決断を奪ってしまうのではないかという、一抹の寂しさを感じずにはいられません。
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