素直に聞く
Sさんには小学四年生の息子がいます。最近、サッカースクールに通い始めたばかりで、週末はサッカーの練習や試合に夢中になっていました。
しかし、いつも喜んでサッカースクールに通っていた息子が、ある時から練習に行きたがりません。理由を聞くと、「毎回ゴールキーパーの練習ばかりコーチにやらされる。おもしろくないから、もうサッカーをやめたい」と言います。
〈なぜキーパーの練習ばかりしなければいけないのか〉と悩んでいる息子に、Sさんは「直接コーチに理由を聞いてみたら?」と提案しました。
後日、息子がコーチに理由を聞いてみると、「まずはフィールド全体を見渡せるキーパーを経験しながら、基本ルールを学ぶのが良い」と説明されました。コーチの言葉に納得した息子は、再び生き生きと練習に行くようになりました。
仕事をする上でも、先輩や上司の指示が理解できず、不本意に感じることもあるかもしれません。そのような時は、上司や先輩に素直に聞き、前向きな姿勢で臨みましょう。
今日の心がけ◆積極的に教えを受けましょう
出典:職場の教養5月号
感想
この話の中でとても心を打たれたのは、息子さんが「納得できないことに対して自分の言葉で質問をする」という姿勢を持てたことです。
そしてそれを後押ししたSさんの対応が、親として非常に理想的だと感じました。頭ごなしに「やりなさい」と言うのではなく、「聞いてみたら?」と子ども自身に解決の道を促す。
そのアプローチが、息子さんの自主性や考える力を育てるきっかけになっていて、感動しました。
コーチもまた、合理的な理由をもって説明をしてくれていて、それが子どもの心にちゃんと届いたことも嬉しいポイントです。
大人になっても、指示されたことの意味がわからないまま、ただ従ってしまう場面が多くあります。
しかし、「素直に聞く」ことで見えてくる背景や意図があるのだと、あらためて気づかされました。
「素直さ」とは従順さではなく、理解を深めようとする誠実さであり、それが仕事や人間関係を円滑にする基盤になるのだと思います。
「今日の心がけ」にあるように、ただ受け身で教えを受けるのではなく、積極的に聞き、吸収する姿勢の大切さを改めて感じさせられました。
否定的な感想
この話には少し引っかかる点もあります。
それは、「素直に聞けばすべてが丸く収まる」という前提が、少し理想的すぎるのではないかということです。
現実の職場や社会では、必ずしも聞ける雰囲気が整っていなかったり、聞いても納得できる答えが返ってこなかったりすることが少なくありません。
特に上下関係の強い組織では、「聞く」こと自体が勇気を伴う行動になってしまい、結果として誤解や不満が放置されるケースも多々あります。
また、息子さんが納得した背景には、「コーチが的確に説明した」という重要な要素があるわけですが、それが抜け落ちてしまうと「素直に聞かない子が悪い」という印象になりかねません。
本当に大事なのは、聞く側の姿勢だけでなく、答える側の誠実さと説明責任でもあります。
このような視点も併せ持つことで、物事をもっと多角的に捉えられるのではないかと感じました。
教えを受けることの大切さと同時に、教える側の在り方にも光を当ててほしいと思います。