2025年7月12日(土) 陰の働き

陰の働き

有給休暇を使い、海外旅行を予定しているAさん。長期にわたり会社を休むため、先々の仕事を終わらせようと、いつもより早めに会社に出勤しました。

出社後、トイレに行くと、ベテラン社員がトイレ掃除をしている場面に出くわしました。Aさんがその社員に挨拶をした後、「トイレ掃除をされていて驚きました」と話すと、照れくさそうに笑っていました。

Aさんが同僚にこの出来事を話すと、その社員は何十年も前から出張などで不在の時以外はトイレ掃除を続けていることを知りました。

何気なくトイレを使用していたAさんでしたが、改めて自社のトイレを眺めてみると、隅々まで綺麗なことに驚かされました。自発的に毎日トイレを掃除していたのかと思うと、頭が下がる思いがしました。

私たちが気持ちよく仕事に取り組むことができるのは、誰かの陰の働きがあるからかもしれません。会社の仲間である周囲のスタッフが気持ちよく業務ができるよう、互いにサポートし合いながら良い職場環境づくりに努めたいものです。

今日の心がけ◆周囲の人をサポートしましょう

出典:職場の教養7月号

感想

この話には、人知れず続けられてきた善意と誠意の重みが、静かに、しかし深く胸に響きました。

トイレ掃除という地味で見過ごされがちな行為を、何十年も変わらず自発的に続けてきたベテラン社員の姿は、まさに「陰の働き」の体現です。

Aさんがその存在に気づいたことで、普段無意識に享受していた快適さが、誰かの努力によって支えられていたことに気づかされます。

そうした「気づき」は、職場における人間関係やチームワークにとって、非常に大きな意味を持ちます。

また、今日の心がけである「周囲の人をサポートしましょう」という言葉が、ただの標語ではなく、現実に根ざしたメッセージとして胸に残ります。

職場という空間は、華やかな成果や目立つパフォーマンスだけでなく、こうした静かな献身によって成り立っているという事実に敬意を払い、私たちもまた、誰かのために手を差し伸べられる存在でありたいと思わせてくれました。

人を見ていないようで見ている社会の中で、このような心遣いを育てることは、より良い職場文化の根幹になるでしょう。

否定的な感想

ベテラン社員の行動が「善意」として当然視され、長年誰もそれに気づかず、それどころか引き継がれたり共有されたりすることもなかったことには、少し引っかかるものを感じます。

会社という組織は、個々の自発性や善意に依存するのではなく、そうした行動が正しく評価され、共有され、時には制度化されるべき場所ではないでしょうか。

陰の働きが美しいのは確かですが、それが「誰にも知られず続けられてきた」ということ自体に、構造的な無関心や無自覚さが潜んでいるようにも感じます。

Aさんが驚いたのも、その行為があまりにも予想外であったからであり、それだけこの社員の努力が日常の中に埋もれていた証でもあります。

「気づき」によって感謝が生まれることは素晴らしい一方で、そもそもそのような努力が見過ごされてきた職場環境についても、少し立ち止まって考える必要があるのではないでしょうか。