2025年7月20日(日) 接客の力

接客の力

A氏は結婚二十周年のお祝いに妻と日本料理店を訪れました。その店では料理の味だけでなく、雰囲気の良さやスタッフの丁寧な接客が印象に残りました。

自らが経営するスポーツクラブでもそうした良い部分を取り入れたいと思ったA氏は、「トレーニングのアドバイスだけでなく、仕事場の整理整頓や気持ちの良い挨拶の習慣を大切にしていこう」とスタッフに伝えました。

しかし、反応はいまひとつで、定期的にその話をしても意識を向上させることにはつながりませんでした。

そこで、A氏はスタッフ数名を連れて、妻と訪れた日本料理店に行きました。実際にその店で時を過ごし、心地の良い接客を受けることで、お客様の満足度をさらに高めるために必要なことを感じてほしかったのです。

翌朝、同席したスタッフが率先して整理整頓に取り組む姿が見られ、挨拶も活発に交わされるようになり、職場に活気が生まれました。

実務以外でも大切にすべきことがあることを忘れないようにしたいものです。

今日の心がけ◆他者の良い部分を取り入れましょう

出典:職場の教養7月号

感想

この話には、人を動かすために必要な「体験を共有する力」が見事に描かれていると思いました。

A氏がスタッフに対して何度も言葉で説明しても変化がなかったのに、実際に自分が感動した接客を「体験」として共有したことで、彼らの行動が自然と変わったという流れは、人の心に響くものがあります。

言葉では伝えきれない「空気感」や「気持ちの良さ」といった感覚的なものが、直接経験することで深く伝わるという実例はとても説得力があり、私自身も何かを伝える際には、押し付けるのではなく、共に感じることの重要性を改めて考えさせられました。

また、「今日の心がけ」で示されている「他者の良い部分を取り入れましょう」という言葉が、まさにA氏の行動と重なり、納得感があります。

ただ真似するのではなく、自分の場にどう活かすかまで考えて行動した姿勢は学ぶべき点です。

そして、スタッフたちの変化が自然に起こっている点にも希望を感じます。

良いものは理屈よりも、心に響いて初めて力を持つということが、この話からよく伝わってきました。

否定的な感想

この話に少し物足りなさを感じたのは、スタッフの「変化の持続性」についての視点が描かれていないことです。

たしかに体験は強力ですが、それが一時的な感動に終わらず、日常にどう根付いていくのかという部分が今後の課題です。

人は感動しても、時間が経てば忘れるものです。

A氏のようなリーダーがそれをどう継続的に支え、仕組み化していくのかまで踏み込まれていれば、さらに深い学びになったと思います。

また、スタッフにとって「接客」という価値観が、自分たちの仕事とどうつながっているかが十分に腑に落ちていなければ、ただの感動体験で終わってしまう恐れもあります。

実際のスポーツクラブの現場でどういう形で活かせるのか、もう少し具体的な橋渡しがあってもよかったのではないかと感じました。

感動と実務をつなぐためには、体験後のフォローアップこそが本質であり、それがなければ再び元に戻ってしまう可能性も否めません。