2024年6月11日(火) シアトルの日本酒

東日本大震災の後に帰還困難区域に指定された福島県双葉町で、造り酒屋の富沢酒造店は、伝統の地酒を三〇〇年間作り続けてきました。

酒屋の人々は避難生活を続けながら再建の地を求めて日本中を回るも、日本酒の複雑な規制の壁が立ちはだかり、その地を見つけることができずにいました。

そんな中、物産展を目的に訪れたアメリカのシアトルに活路を見出したのです。前例のない異国での再出発は、不動産の契約、酒蔵の建造、ビザや事業ライセンスの取得、原料の調達などに想定以上の時間と労力を要しました。

そして、一三年の歳月をかけてシアトル産の日本酒が出来上がったのです。地元のブドウの酵母菌の影響か、ほんのりと白ワインに似た仕上がりとなり、併設したテイスティングルームには、多くの地元客が訪れています。

アメリカでの日本酒の人気の後押しに加え、日本酒造りに関心を持つアメリカ人が増えることも期待され、業界に新たな扉を開いた事例といえるでしょう。

環境の変化を新たな挑戦の機会とし、大胆に活路を切り開きたいものです。

今日の心がけ◆変化をおそれず新たな挑戦をしましょう

出典:職場の教養6月号

感想

伝統を重んじながらも、柔軟な発想で異国の地に新たな酒蔵を建てるという行動力が素晴らしいと思いました。日本酒という日本の伝統文化を、海外で表現し続けることは、国境を越えた文化交流の促進にも寄与します。

この成功例は、変化を恐れずに新たな挑戦をする大切さを教えてくれます。困難や変化は避けられないものですが、それを乗り越え、さらにはそれを利用して新しい価値を生み出すことができるのです。富沢酒造店のように、困難をチャンスに変えることができるかどうかは、私たちの心がけ次第だと感じました。

また、アメリカで日本酒造りに関心を持つ人々が増えることは、日本酒業界にとっても大きな前進です。これは、文化の架け橋としての役割を果たし、さらには日本酒が世界中で愛され続ける可能性を示唆しています。

この話から、新たな挑戦をすることの大切さ、そして困難の中に潜むチャンスを見出し、それを活かす創造力と勇気がいかに重要かを学び取ることができます。未来は不確かでも、前向きに、そして大胆に歩みを進めることで、新しい可能性を切り開くことができるのだと思いました。

否定的な感想

まず、富沢酒造店のような伝統ある造り酒屋が、日本国内で再出発の地を見つけることができなかったという事実には、深刻な問題が潜んでいると言えるでしょう。日本酒の複雑な規制が新たな挑戦を阻んでいるというのは、日本国内のビジネス環境がいかに硬直しているかを示唆しています。このような状況は、伝統産業だけでなく、新しいアイデアや技術を持つ起業家たちにとっても大きな障壁となり得ます。

さらに、シアトル産の日本酒が地元のブドウの酵母菌の影響で白ワインに似た仕上がりになったという点についても、伝統的な日本酒の味わいを重んじる人々からは、正統性を損なうものと受け取られかねません。伝統的な製法や味を守りつつ、新しい地でどのように独自性を出すかは、非常に難しいバランスを要求されます。

この話からは、変化に対する挑戦の重要性や新たな可能性を追求する姿勢が伝わってきますが、その裏には伝統と革新の間での葛藤、国内外でのビジネス環境の差異、そして文化的アイデンティティの維持という、解決すべき課題も同時に浮き彫りになっています。