ある朝、Kさんは駅のプラットホームで電車を待っていました。すると、隣にいた高校生たちの楽しそうな会話が聞こえてきました。
その中で、聞き覚えのない言葉が耳に入ってきたのです。それは「おもくろい」という言葉でした。
前後の文脈から察するに、「おもしろくない」ことを「おもくろい」と言っているようでした。Kさんは〈面白いの”白”を”黒”にして、面白くないことを面黒いと言っているのか〉と、最近できた若者言葉だろうと納得したのです。
しかし後日、何気なく辞書で「面黒い」を引いたところ、「面白い」を戯れで言ったもので「面白い」と同義であり、近世においては「面白くない」を洒落を聞かせた言葉で、「つまらない」の意味も持つと知ったのです。
昔の人も今の若者と同じような感性で、言葉遊びをしていたのかもしれません。普段何気なく使っている言葉を改めて調べてみると、意外な意味や由来に行き当たることがあります。様々な人が紡いできた言葉を大切にしたいものです。
今日の心がけ◆言葉を大切にしましょう
出典:職場の教養10月号
感想
若者言葉だと思っていた「おもくろい」という言葉が、実は古くから使われていた言葉で、しかも「面白い」と「つまらない」の両方の意味を持っていたとは驚きです。
日本語には、一見すると反対の意味を持つ言葉が、ある文脈では同じ意味を表したりすることがありますが、「おもくろい」も、そのひとつでしょうか。これは、日本語の表現の面白さの一つと言えるでしょう。
普段何気なく使っている言葉にも、深い歴史や背景があることを改めて気づかされました。言葉は単なるコミュニケーションツールではなく、人々の文化や思想を映し出す鏡でもあります。Kさんのように、言葉の由来や意味を調べてみると、新しい発見がたくさんあるのではないかと感じました。
否定的な感想
この話には現代の言葉の変化を過度に美化し、深い分析を欠いている部分があると感じました。
若者言葉の「おもくろい」に触れつつも、それがただの一時的な流行語であり、言葉の進化というよりも単なるスラングにすぎない可能性もあるため、それに過剰な価値を見出しているとも言えます。
また、辞書を調べた結果として「面黒い」と結びつけるのは、意図的に話をドラマチックにしようとしているように見えますが、その過程があまりにも表面的です。
辞書を引いただけで「昔の人も同じ感性を持っていた」とする結論は、浅い理解に基づくものと感じます。
言葉が時代を超えて共通の感性を持っているというのは興味深い視点ですが、歴史や文化の背景に踏み込まず、簡単に結論を出しているところに物足りなさがあります。