Sさんは、出勤前の早朝のウォーキングを日課としています。
ひと月ほど前のある朝を境に、それまでは気づかなかった道端のゴミが目に付くようになりました。そして〈どうしてこんな所にゴミを捨てるんだろう〉とゴミを捨てた人への責め心が生じてきたのです。
しかし、〈誰かを責めても仕方がない。気づいた自分が拾えばいい〉と決心し、ウォーキングと並行してゴミ拾いを始めました。
日課のコースを歩き終えると、持参したビニール袋が一杯になり、〈なぜこんなにたくさんのゴミを捨てるんだ〉と腹がたった一方で、すっかりきれいになった道や公園を眺めて、清々しさも感じたのです。
その後、Sさんの責め心は日に日に薄れ、ウォーキングを始めた当初よりも、ゴミ拾いを行なうようになった最近の方が、心が晴れやかになっています。
〈ゴミを拾うことは、街をきれいにするばかりか、自分の心の浄化になったのだ〉と心の底から思うSさんでした。
今日の心がけ◆気づいたら行動しましょう
出典:職場の教養10月号
感想
私も、時折同じような経験をすることがあります。問題に気づいたとき、他人を責めたり嘆いたりするだけでは何も変わらないのに、ついそのような感情に流されがちです。
しかし、Sさんのように「気づいた自分が行動する」というシンプルな決意は、多くの場面で役立つ心構えだと思います。特に、ゴミ拾いのような小さな行動が、実際には自分自身にとっても大きな変化をもたらすことは、この話の大きな教訓だと感じました。
また、Sさんが行動を続けることで「責め心が薄れた」という点も注目すべきです。最初は誰かの行動に対する怒りが動機だったものが、次第にその行動自体が目的となり、清々しさを感じるようになるという流れは、行動が心を変える力を持っていることを示しているように思います。
この話から、私も日常で「気づいたら行動する」というシンプルな考え方をもっと意識してみようと思いました。自分自身のためにも、周りのためにも、積極的な姿勢を持つことが大切だと感じます。
否定的な感想
Sさんの行動は確かに立派ですが、問題の本質を個人の行動で全て解決できると考えるのは少し楽観的すぎるように感じます。
ゴミのポイ捨ては個人のモラルや意識の問題であり、一人が拾い続けることで根本的な問題が解決するわけではありません。Sさんが自ら行動を起こしてゴミ拾いをすることは称賛に値しますが、その一方で、他者が変わらない限り、同じ問題が繰り返されるという現実があります。
また、「誰かを責めても仕方がない」という考え方も、一見前向きに見えますが、ポイ捨てする人々への責任を免除しているようにも感じます。
社会全体のモラルやルールに対する責任を軽視して、問題を個人の善意に押し付けてしまうのは不公平に思えます。もし全員が「自分で拾えばいい」と考えるならば、根本的な意識改革や教育の機会を見逃すことになり、長期的な解決策にはつながらないでしょう。