冬の訪れを感じるようになったある日、Y子さんは冬用のコートをクローゼットから取り出しました。それは長男が中学生の時に着ていたものです。
長男が中学校に入学して半年が経った頃のことです。そろそろ通学用の冬のコートを購入しようという話になり、休日に二人でデパートに行きました。
売り場を見回すと、様々なタイプのコートが所狭しと並べられていました。Y子さんは長男に、「どれがいいの?欲しいものを選んで」と声をかけました。
すると、しばらく考えていた長男は、「三年間ですぐにサイズが合わなくなってしまうから、少し大きめのものを買おうかな。中学校を卒業したらお母さんにも着てほしいから一緒に選ぼうよ」と言ったのです。
息子の優しさと気遣いに胸が熱くなったY子さん。息子は一緒に選んだコートを着て通学し、卒業後は「おさがり」として譲ってくれたのでした。
今でもY子さんは、コートを羽織るたびに温かな気持ちになるといいます。時には、物に込められた思い出を振り返ってみてはいかがでしょうか。
今日の心がけ◆物に込められた思い出を振り返りましょう
出典:職場の教養10月号
感想
物に込められた思い出が長く残り、Y子さんがコートを羽織るたびに温かい気持ちになるというエピソードは、親子の絆が物を通じて受け継がれることを象徴しています。
日常の中にある小さな幸せや、大切な人の思いやりを改めて感じるきっかけとなり、このような思い出が人生の宝物であることを思い出させてくれます。
「物に込められた思い出を振り返りましょう」という提案は、日常の中で忘れがちな大切な感覚を取り戻すきっかけになります。
人は日々の忙しさに追われ、時には過去の思い出を振り返る余裕を持てないことも多いですが、物を通じてその瞬間の記憶や感情を再び感じることは、心を温かくし、豊かな気持ちにさせてくれます。
古い物には、それを手にした当時の心境や出来事が宿っており、それに触れることは心の整理や癒しにつながることもあると思いました。
否定的な感想
長男の優しさや気遣いはとても素晴らしいのですが、あまりにも理想的で、若干現実味に欠けるようにも感じられます。
多くの親子関係において、子どもは親を思いやることよりも、自分自身の欲望や考えを優先させることが一般的かもしれません。この話が示す理想的な親子関係が、逆に一部の人には「自分には無理だ」と感じさせてしまう可能性もあります。
また、物に込められた思い出を振り返ることは確かに素晴らしいのですが、同時に過去に執着しすぎるリスクもあります。
古い物に込められた思い出を大切にすることは重要ですが、あまりに過去を振り返りすぎると、今この瞬間の成長や変化を見逃してしまう可能性もあります。
特に、親が子どもとの過去の思い出に依存しすぎると、子どもが独立する過程で感情的な葛藤が生まれるかもしれません。