戦国武将の上杉謙信は、屈指の戦上手で「越後の龍」とも呼ばれました。
上杉謙信を祀る山形県米沢市の上杉神社の石碑には「上杉謙信公家訓十六ヶ条」が刻まれています。この十六ヶ条の別名は「宝在心」で、謙信は「宝は心に有り」と説きました。
物質的な富や権力よりも、心の中になる人格や徳が真の宝であると示していると考えられます。謙信は内面的な成長や精神的な豊かさが最も重要であり、それが人間の本当の価値を決定すると考えたのです。
「宝在心」の七条目には「心に邪見なき時は人を育つる(間違った見方がなければ、人が従ってくる)」とあります。
義を重んじ、正しい道を歩もうとする謙信だったからこそ、多くの武士が付き従い、戦を勝利に導けたのかもしれません。物質や技術に勝るのは、いつの時代も人の心の持ちようであるといえるでしょう。
周囲から〈一緒に働きたい〉と思われるような人格を磨きたいものです。
今日の心がけ◆心を磨きましょう
出典:職場の教養11月号
感想
上杉謙信の「宝在心」の教えは、物質的な富にとらわれず、内面的な価値を尊ぶことの大切さを改めて思い出させてくれます。
「心にこそ真の宝がある」という信念を持っていたからこそ、謙信は多くの武士から敬意を集め、一緒に戦いに臨む仲間を得られたのでしょう。
この「宝在心」は、現代のビジネスにも通じるもので、周囲から信頼され、尊敬される人間になるためには、心の在り方こそが最も大切なのだと実感します。
特に、「心に邪見なき時は人を育つる」という言葉は、リーダーとしての在り方について多くを教えてくれます。
人間関係や組織の運営には、正しい価値観を持ち、誠実であろうとする姿勢が不可欠です。
こうした姿勢を周りに示すことで、自然と人が集まり、強いチームが生まれるのだと感じます。謙信の教えを通して、自分も内面的な成長や人間性の向上を重視し、周りから「一緒に働きたい」と思われる存在を目指したいと思います。
物質的な成功に走りがちな現代社会だからこそ、この「宝は心に有り」という教えが、非常に価値あるものとして響きます。
否定的な感想
現代において「宝在心」の考え方がどこまで通用するかについては、少し疑問も残ります。
現代社会では、物質的な成功や外見的な成果が強く求められる場面も多く、内面的な成長や人格を重視する姿勢だけでは、実際に結果を出すのが難しいこともあるのではないでしょうか。
特に競争の激しいビジネスやスポーツの世界では、精神的な強さだけではなく、技術的なスキルや結果も求められるため、「宝在心」だけでは実際の成果に結びつかない場合もあると感じます。
また、「心を磨く」ということが抽象的で、具体的に何をすれば心が磨かれるのかがわかりにくい点もあります。
謙信の時代のように忠誠心や武士道が通用する世界とは異なり、現代ではより複雑な価値観や多様な生き方が存在します。
したがって、「正しい道を歩む」「邪見を持たない」といった価値観を具体的にどう実践し、どのような形で心を磨くのか、もう少し明確な指針が欲しいと思いました。
謙信の教えを現代に応用するためには、もう少し具体的な行動や方法に落とし込む必要があると感じます。