複数の成果を同時に狙い、何も得られないことを「虻蜂取らず」と言います。
これは獲物を捕る蜘蛛の様子が語源のようです。虻と蜂が同時に巣にかかり、虻を捕りに向かうと蜂が逃げようとし、蜂に向かうと虻が逃げそうになる。右往左往しているうちに、両方に逃げられてしまうという意味です。
職場や家庭においても、多くの仕事や課題を一遍に片付けようとすると、結局はどれもが中途半端になってしまいかねません。
Yさんは年頭に、家庭・仕事・健康の項目でそれぞれ三つずつ目標を掲げていましたが、数年来その目標のほとんどを達成できずにいました。
ある日、先輩から「何が何でも達成したい目標だけに絞ると良い」とアドバイスされ、翌年は一つの目標だけに絞ったのです。これにより目標を達成できました。
「一点突破」と言われます。目の前にある仕事を、一つひとつ着実にこなすことができれば、結果として多くの成果を生むことができます。
今日の心がけ◆目の前のことに集中して取り組みましょう
出典:職場の教養11月号
感想
このエピソードは、現代社会において特に重要な教訓を含んでいます。
多くの人が家庭、仕事、健康など複数の役割を同時にこなそうとする中で、Yさんのように多くの目標を掲げるものの、達成できずに自己評価を下げてしまうことは珍しくありません。
そのため、「一点突破」の考え方は非常に実用的で、心に響くものでした。
先輩の「何が何でも達成したい目標だけに絞ると良い」というアドバイスは、目標達成の心理学や行動科学的な視点からも理にかなっています。
目標を一つに絞ることで、リソースを集中し、成果を得られる確率が格段に高まることは、多くの研究でも支持されています。Yさんがその結果、目標を達成できたのは、この理論の実践的な証拠としても価値があります。
また、「虻蜂取らず」ということわざの語源を蜘蛛の動きに例えて説明した点もわかりやすく、印象的です。
実生活での教訓をことわざを通して学べる点が、この話の奥行きを深めています。
「目の前のことに集中する」という結論も実践的で、自己管理や目標達成に悩む人にとって非常に参考になると思いました。
否定的な感想
このエピソードは教訓的ですが、現実の複雑さを完全に反映しているとは言い難い部分もあります。
たとえば、Yさんが年頭に掲げた複数の目標が具体的にどのようなものだったかが詳細に語られていないため、どの目標を絞り込むべきだったのかや、その判断基準がやや曖昧に感じられました。
この部分を深掘りすることで、より説得力のあるストーリーになったのではないでしょうか。
また、「一点突破」が有効な場面も多い一方で、複数の目標を同時に進めなければならない状況も少なくありません。
特に、家庭、仕事、健康のようにそれぞれが独立した領域の場合、一つに絞りすぎると他の分野が疎かになり、バランスを失うリスクもあります。このため、目標を絞る際には、全体の調和を考慮する必要があると感じました。
さらに、「虻蜂取らず」という例えはわかりやすいですが、この物語の教訓としてはやや単純化されすぎている印象も受けます。
現代では複雑な状況下で多様な役割を果たさなければならないことが多く、「目の前のことに集中」という結論がすべての状況に当てはまるわけではないことも考慮するべきかもしれません。
優先順位をつけるだけでなく、効率的なリソース配分や協力体制の構築といった視点も盛り込まれると、より現実的なアプローチになるでしょう。