ある日の夕方、Yさんは六歳の長男に「今日のお風呂の予定は?」と尋ねました。すると長男は、「今日は八時から入れるよ。ラベンダーの香りだよ」と答えました。長男は就学前から、家事を手伝っています。
それは、調理中のYさんに、長男が「僕もやる」と言ってきた時に卵を割ってもらったことがきっかけでした。それ以来、キュウリを切る時やレタスをちぎる時などは声をかえて、手伝ってもらっていました。
その後、〈長男の積極性をより引き出すことができたら〉と考えたYさんは、夫婦で話しあい、長男を「Y家のお風呂大臣」に任命することにしました。
これまでも浴槽を洗ったり、湯を張るスイッチを押すなどの手伝いをしていた長男でしたが、「お風呂大臣」に任命されてからは、Yさんが何も言わなくてもお湯を入れたり、計画的に浴室を掃除するようになったと言います。
仕事を任されたことでやる気が増したという経験を持つYさんは〈子供も同じなのだな〉と実感し、長男の成長に目を細めています。
今日の心がけ◆積極的に仕事に取り組みましょう
出典:職場の教養11月号
感想
このエピソードは、幼い子供に責任を持たせることで、成長ややる気を引き出す効果を見事に描いており、心温まる話です。
特に「お風呂大臣」というユニークな役職の設定は、長男の意欲を引き出す工夫として非常に効果的で、家庭教育における参考になるアイデアだと感じました。子供に明確な役割を与えることで、主体性を育むことができる点に強い共感を覚えます。
また、「積極的に仕事に取り組みましょう」というメッセージには、日常生活や仕事における心構えとして非常に価値があります。
積極性は、単に効率や成果を上げるだけでなく、自分自身の成長を促進し、周囲にも良い影響を与える力があるからです。
さらに、この言葉は、行動を「受け身」ではなく「能動的」に変える重要性を思い出させてくれます。
仕事や日々の作業に対して主体的に取り組むことで、自分がその活動の一部としての価値を感じられるようになるのは非常に意義深いです。
特に家庭や職場のようなチーム環境では、個々が積極的に動くことで、全体の雰囲気が向上し、相乗効果を生む土台が作られます。これは職場でのリーダーシップにも応用できる普遍的な教訓だと感じます。
否定的な感想
このエピソードには「家族全体の協力」という観点がやや欠けているようにも感じました。
長男に役割を与えること自体は素晴らしいのですが、それが「大臣」という肩書きに集中しすぎると、他の家族が「長男がやるからいいや」と、自然に手を引いてしまう可能性もあります。家族全体で協力し合う雰囲気を維持する工夫も必要ではないかと感じました。
また、「積極性を引き出す」という目的が子供にとってプレッシャーになり得る点にも注意が必要です。長男が「お風呂大臣」としての役割を楽しんでいるうちはいいですが、もしも負担に感じる瞬間が来たとき、どのようにフォローするのかについても考えるべきかもしれません。
責任を与えることが子供の成長につながる一方で、そのバランスを誤ると「楽しさ」から「義務感」へと変わってしまうリスクがあります。
「積極性」というテーマは、多くの場面で成長の鍵となる一方で、行き過ぎると逆効果になる可能性もあります。
そのため、このメッセージを受け取る際には、自分自身の状況や心の状態を見つめることが重要だと感じました。