2024年12月2日(月) エレベーターの待ち時間

問題解決に関するエピソードとして、しばしば取り上げられるものに「エレベーターの話」があります。

舞台はある大きなオフィスビルです。テナントに入っている企業やビルの利用者から「エレベーターの待ち時間が長い」とクレームが入っていました。

困ったビルの支配人は専門家と解決策を考えましたが、エレベーターを増設したり、高速機種に変更したりと、どれも大幅なコストがかかる案ばかりでした。

そんな中、新人の若いアシスタントが、「各階のエレベーターの前に大きな鏡を設置したらどうか」と提案したのです。困り果てていた支配人は、すぐにそのアイデアを採用したところ、クレームがなくなりました。

理由は簡単です。エレベーターを待つ利用者が、鏡を見て身だしなみを整えたり、鏡越しに他の人を見たりして、待ち時間を短く感じたからです。

エレベーターの速度や利用者の待ち時間の長さは何一つ変わっていません。この解決策は、見事に人間の心理を捉えた名案だったのです。

今日の心がけ◆問題を多角的に捉えましょう

出典:職場の教養12月号

感想

このエピソードは、問題解決における発想の転換の重要性を非常に的確に示しています。

「エレベーターの速度や待ち時間そのものを変えずに、心理的な感覚を変えることで不満を解消する」というアプローチは、問題解決が必ずしも物理的な改善やコストのかかる対策を必要としないことを教えてくれます。

特に、現代のようにリソースの制約が多い中で、このような創意工夫は多くの分野で応用可能だと感じました。

新人アシスタントのアイデアが採用された点も印象的です。

これは、多様な視点を取り入れることの大切さを強調しています。

一般的に、経験豊富な専門家の意見が重視されがちですが、このエピソードは、経験や地位に関係なく、柔軟な発想が最善の解決策につながる可能性を示しており、非常に励みになる話です。

また、人間の心理に寄り添った解決策は、利用者の満足度を高めるだけでなく、実行のコストが低いことから、効率性にも優れています。

鏡を設置するという単純な行動が、これほどのインパクトをもたらしたことには感嘆せざるを得ません。

この話が日々の問題解決への取り組み方を見直すきっかけとなり、「何を変えるべきか」ではなく「どのように感じ方を変えられるか」に着目するヒントを与えてくれる点は大きな魅力です。

否定的な感想

このエピソードには「成功の陰にある他の要因」について掘り下げが足りないようにも感じます。

たとえば、エレベーターの前に鏡を設置するという提案は、シンプルで有効でしたが、どの程度の利用者に効果があったのか、また文化的背景や人間関係がどのように影響したのかは詳しく語られていません。

この解決策が他の状況でも同様に通用するのかどうかには疑問が残ります。

さらに、「心理的感覚の変化」で不満を解消するという発想自体は有用ですが、根本的な課題である「エレベーターの待ち時間が長い」という問題は依然として解決されていません。

これは長期的な視点から見ると、顧客体験を改善する根本策にはならない可能性があります。

このアプローチが一時的な解決策に過ぎない場合、同じような不満が再燃する恐れもあります。

また、この話では若いアシスタントの意見が採用された成功例が強調されていますが、現実にはこのようなアイデアが無視されるケースも多いでしょう。

組織内でどのように新しいアイデアが評価され、実際に実行に移されるかについての背景や工夫が示されていれば、より実践的な教訓として価値を高められたと思います。