Tさんが所属する部署には、今年、一人の新入社員が配属されました。そのため、その新人に仕事を教え、相談を受けることも多くなりました。
ベテランのTさんから見ると、たびたび「今どきの新人は」と呟いてしまいそうな振る舞いや、ヒヤッとするような場面に出くわすこともありました。
ある日、そのことをお世話になった先輩に話すと、遠慮がちに「かつての君も同じようなことをしていたよ」と諭されたのです。
先輩から、その時の詳しい状況を初めて知らされたTさんは、自分の顔が赤くなるのがわかるほど恥ずかしくなったといいます。
Tさんは、自分が知らないところで、先輩たちに様々な失敗を許してもらい、庇ってもらって今の自分があることを改めて痛感したのです。
人の姿は目につきやすく、自分の姿は見えにくいといいますが、時を経た過去の自分の姿はさらに見えにくく、忘れやすくなるのかもしれません。
「かつての未熟な自分」の姿を心に留めて後輩と接したいものです。
今日の心がけ◆自分自身を振り返りましょう
出典:職場の教養12月号
感想
この話は、職場の人間関係や成長について考えさせられる深い内容を持っています。
Tさんが、自分の新人時代の過ちを思い出し、それをきっかけに謙虚さと感謝の気持ちを再確認する姿勢は、とても共感を呼びます。
特に、先輩の「かつての君も同じようなことをしていたよ」という指摘には優しさと洞察が詰まっており、単なる指摘ではなく、Tさん自身が内省する機会を与えるものとなっています。
こうした先輩の存在は、職場の宝物ともいえるでしょう。
また、「人の姿は目につきやすく、自分の姿は見えにくい」という指摘は、人間の普遍的な真理を表現しており、日常のあらゆる場面で当てはまると感じます。
この話を通じて、Tさんだけでなく私たちも、自分の過去を振り返り、他人への批判や不満を減らすことができるのではないでしょうか。
そして、そうした謙虚な姿勢は、後輩や新人にとっても良い手本となり、信頼関係を深める基盤になります。Tさんが新人の成長を温かく見守り、同時に自身も学びを得るという姿勢には、社会人としての成熟した姿が垣間見え、とても感動しました。
否定的な感想
Tさんが先輩の助言を受け入れ、自らを省みる姿勢は立派ですが、現実にはそう簡単に自分を振り返ることができない人も多いです。
また、「かつての未熟な自分を心に留めて」という考え方自体は美しいですが、それを実践するためには、強い意識や継続的な努力が必要です。
Tさんがどのようにそれを後輩指導に活かしていくのか、具体的な行動や工夫が描かれていないため、少し抽象的に感じました。
また、職場での後輩指導は理想論だけではなく、現実的な課題や困難がつきものです。
新人の「今どきの振る舞い」に苛立ちを覚えるTさんの感情も正当なものであり、その部分を過度に抑え込むことはむしろ不健全です。
人間である以上、怒りや苛立ちを持つこと自体は自然で、それを建設的に解消する方法も示されていれば、よりバランスの取れた教訓になったのではないでしょうか。
心がけを掲げるだけでなく、それをどう実行に移すかという具体策が欠けている点が気になりました。