総務部に所属するTさんは、日々デスクワークに励んでいます。
あるとき、今取り組んでいる案件のデータの保存方法を上司から聞かれ、「上書きをして更新しています」と答えました。
すると上司からは、「そのデータは上書きではなく、作業日と概要などをファイル名に記して、日別のファイルを作成しなさい。引き継ぎ対応や、後々修正が必要になったときに役立つよ」と教えられ、Tさんはその通り実行しました。
数日後、データの入力にミスが発覚しました。そこで、作業日ごとに作成したファイルを順番にたどると、間違えた箇所を迅速に把握でき、修正資料もすぐに作成できたうえ、部署全体で間違えた作業内容を共有することもできました。
また翌年、この仕事の次の担当者が別の部署から来た後輩に決まりました。日ごとの進捗状況と併せて概要を伝え、スムーズに引き継ぎができたのでした。
〈アドバイスを聞いて良かった〉と、指示してくれた上司に感謝し、こまめに作業記録をつけているTさんです。
今日の心がけ◆仕事の過程を残しましょう
出典:職場の教養12月号
感想
この話は、業務の効率化や正確性の向上だけでなく、チーム全体での連携や引き継ぎの重要性を深く考えさせられるエピソードでした。
上司のアドバイスが具体的で実践的である点、そしてTさんが素直にその指導を受け入れて行動に移した点に、感銘を受けました。
データ管理は日常の作業では見落とされがちですが、実際にミスやトラブルが発生した際、その重要性が一気に浮き彫りになります。
この話では、その現実的な教訓がうまく描かれており、「事前準備の徹底が、トラブル対応の鍵になる」という普遍的なメッセージを伝えています。
また、過去の記録が役立っただけでなく、翌年の引き継ぎにもスムーズに活用できた点は素晴らしいですね。
記録を残すことは単なる「保険」ではなく、組織の知識を共有し、効率的に次世代へバトンを渡すための仕組みでもあることが分かります。
Tさんが上司に感謝し、さらに自分の習慣として取り入れている点は、指導を受けた側として模範的な行動であり、職場全体の士気を高める要因にもなり得るでしょう。
今日の心がけ「仕事の過程を残しましょう」が、具体的な事例として理解しやすく描かれており、とても有意義だと感じました。
否定的な感想
Tさんが上司のアドバイスを即座に実行し、そのメリットを数日後にはっきりと実感したという流れは非常にスムーズですが、実際にはこうした改善策が習慣化されるまでには、もっと時間や労力がかかることが多いのではないでしょうか。
新しいルールや手法を取り入れる際には、他のメンバーにも協力を仰ぐ必要がある場合があり、それが負担になったり抵抗を生む可能性も考えられます。
また、「ミスが発覚した」という状況が、あまりにもすんなりと解決された点も気になります。
本来なら、ミスの責任の所在を追及したり、修正作業に時間がかかることもあるはずです。
この話では、あたかもシステムさえ整えればすべてが解決するかのように描かれていますが、実際には「記録を残すこと」と「ミスを防ぐこと」や「職場の調和を保つこと」は、別の問題として考える必要があります。
さらに、上司のアドバイスが的確である点は評価できますが、これが上司の主観的な判断によるものであった場合、必ずしもTさんや他の同僚にとって最適解とは限りません。
話全体が、やや一面的に「正しい指導者と素直な部下」の物語として収束しており、より多角的な視点があれば、さらに現実味のある教訓として伝わったのではないかと感じました。