私たちの暮らす街中には、利便性の向上や活性化のために、心理効果を利用した設計がなされている場が多くあります。
例えば高速道路のサービスエリアのトイレのケースです。混雑の要因として、奥の暗いトイレは使われず、手前だけに人が集中する状況がありました。そこで、奥の照明を明るくすると、万遍なく使われ、混雑が緩和されたのです。
これは「サバンナ効果」と呼ばれる心理効果です。暗い森の中にいる人が、明るい草原(サバンナ)を見ると安心感を覚え、草原へと向かいたくなるのです。
一般的に、人が「光」に対して「気になる」「期待する」などの心を抱き、そこに「集まる」といった行動をとる現象を利用しています。
店舗の入口は開いていても、建物の中が暗く、人の気配が感じられないため、足を踏み入れるのに躊躇してしまった経験がある人もいるでしょう。
お客様が利用しやすく、従業員が働きやすい環境を整えるべく、改善する余地がないか検討してみるのもよいでしょう。
今日の心がけ◆働く場を整えましょう
出典:職場の教養12月号
感想
この話は、心理学とデザインが私たちの日常生活にどれほど密接に関わっているかを実感させてくれる興味深いエピソードでした。
特に、「サバンナ効果」という身近な現象を例に挙げることで、具体的かつ分かりやすく説明されている点が素晴らしいと思います。
明るさが人間に安心感を与え、その行動に影響を及ぼすという心理的メカニズムは、誰もが直感的に理解しやすく、それが実際の場面で問題解決に繋がったという事例には説得力があります。
また、この話がトイレや店舗の設計だけでなく、職場環境の改善にも繋がるヒントを与えている点はとても有意義です。
照明や空間デザインといった細かな要素が、人々の行動や生産性に大きな影響を及ぼすことは、企業や自治体にとっても重要な学びだと感じます。
心理的な快適さを考慮した環境づくりは、働く人々や利用者にとっての「気持ちの良い場所」を提供し、結果的に効率や満足度の向上に寄与するでしょう。
今日の心がけ「働く場を整えましょう」という提案も、日常に具体的に活かせる内容で、とても実践的だと思いました。
否定的な感想
人が安心感を覚える要因は「光」だけではなく、音、温度、匂い、レイアウトなど多岐にわたります。
例えば、トイレの混雑解消においても、照明以外の要素、例えば清潔感や案内表示の工夫など、複数の要素が関与している可能性があるのではないでしょうか。
そのため、サバンナ効果の例だけで結論づけてしまうのは、問題解決の多様性を見逃してしまう恐れがあります。
また、トイレや店舗の照明という非常に特定の事例が中心に語られているため、これをそのまま職場環境の改善に結びつけるのはやや飛躍があるようにも感じました。
職場環境では、照明やデザインだけでなく、労働条件やコミュニケーションのあり方、働く人々の意識改革といった複雑な要因が絡み合います。
この話では、それらの多面的な要素に触れることなく、照明効果のみに焦点を当てているため、やや一面的な視点になってしまっている印象を受けました。
さらに、「暗い建物が利用されにくい」という例は理解できるものの、その現象がどれだけ広く応用できるのかについて、具体性やデータが不足していると感じます。
心理効果の事例として面白いのは間違いありませんが、それを活用するためには、より幅広い調査や実証が必要だと感じました。