福島県にある株式会社ら・さんたランドは、約三千の企業や個人宅を車で回り、手作りパンを届けています。一九九三年にオープンし、現在では、自社パン工房や手作り弁当を販売する店舗の運営も行なっています。
パンの移動販売は、当時はまだ珍しいものでした。同社の鈴木勲社長は〈子供の頃、母が作ったパンが食べられるのがうれしかった。いつか母のような美味しいパンを作ってたくさんの人に届けたい〉という思いを抱いていたそうです。
開業以来、自分の子供たちに「パンを食べるなら、お父さんの会社のパンを食べなさい」と胸を張って言えるような、体に優しく、食べて笑顔になれるパン作りに取り組んできました。そして今年の一月に新商品が完成しました。
これは、自社農園で採れた「えごま」を記事に練りこんだパンで、国産小麦の甘みと独特の食感が相まって、瞬く間に看板商品になりました。
人の役に立つことや喜ばれることを考え、顧客を家族のように大切に思う心が、新たな商品の開発につながっているのでしょう。
今日の心がけ◆相手に喜ばれる働きをしましょう
出典:職場の教養12月号
感想
株式会社ら・さんたランドの取り組みは、地域社会に根差しながら「美味しいパンを作ってたくさんの人に届けたい」という理念を体現している点で、非常に感銘を受けます。
単にパンを届けるだけではなく、顧客を「家族のように」思う心が、サービスや商品の隅々にまで行き渡っていることが感じられます。
このような姿勢は、単なるビジネスではなく、地域コミュニティの絆を深める一助となっています。
移動販売というスタイルも、顧客の利便性や温かさを考えた工夫の表れです。
高齢者や移動が難しい人々にとって、自宅近くでパンを購入できるのは大きな助けとなるでしょう。
また、自社農園で採れた「えごま」を使った新商品は、地元の食材を活かし、健康志向の現代ニーズにも応えています。
これは、ただ商品を売るだけでなく、地域の自然や文化を共有するという点で顧客の喜びを深める工夫だといえます。
さらに、「体に優しく、食べて笑顔になれるパン作り」という信念は、企業としての使命感と誇りを強く感じさせます。
「相手に喜ばれる働き」を軸にしたこの姿勢は、働く社員や地域社会全体にポジティブな影響を与えると同時に、顧客に対しても感謝と信頼を築く基盤となっています。
これらの取り組みが、単に商品を売る以上の価値を提供していることは疑いがありません。
否定的な感想
パンの移動販売という事業形態が、現在の多様化した消費者ニーズにどれほど対応できているのかには疑問が残ります。
たとえば、オンライン注文やデジタル決済などの現代的な利便性を求める顧客が増えている中で、従来の車による配達モデルだけでは対応が難しい場合もあるでしょう。
これらの技術やサービスをどのように活用していくかが、今後の課題になるのではないでしょうか。
また、えごまパンのような健康志向の商品を推進するのは素晴らしいですが、一部の消費者にとっては価格が高いと感じられることも考えられます。
地域密着型の企業として、幅広い顧客層に手が届く価格設定やマーケティング戦略が求められる場面もあるでしょう。
さらに、地産地消にこだわるがゆえに、原料供給や生産規模の拡大に課題が生じる可能性も考えられます。
これらの点を克服することで、より多くの人々に笑顔を届けられる企業へと成長していくのではないかと思います。
補足情報
- ら・さんたランド公式ホームページ
https://www.lasanta.co.jp/