諺に「思い立ったが吉日」とあるように、仕事に限らず何事においても、何かを始めようと思った時にスタートすることが肝要です。しかし、実際には先延ばしにしたり、過去の失敗にとらわれて取り掛かるのが難しいこともあるでしょう。
国際日本文化研究センター教授の磯田道史氏の著書『無私の日本人』には、江戸時代後期の庶民である穀田屋十三郎の話が収められています。
当時、仙台藩吉岡宿は年貢が重く、夜逃げが相次ぎ町は寂れていきました。町を立て直すため、十三郎は私財や命さえも捨てる覚悟を持って挑んだのです。
しかし、度重なる苦難により追い込まれます。それでも十三郎は逃げずに「今」できることを実行し、やがて前代未聞の金融事業を成功させたのです。
ベストと思って実行したことでも、上手くいかないことがあります。その時は、反省することも大事ですが、「今、何ができるのか」と考えることが大切です。
私たちも決意と覚悟を固めてスタートを切れば、できないことはないでしょう。目標に向かって一歩一歩前進していきましょう。
今日の心がけ◆新しいことに挑戦しましょう
出典:職場の教養1月号
感想
「思い立ったが吉日」という諺が、この話の核となっており、行動のタイミングやその重要性を強く感じさせます。
特に、江戸時代の穀田屋十三郎の話は、個人の信念と行動が社会をどれほど変えることができるのかを見事に示しており、非常に感動的です。
自分の私利私欲を捨て、町全体の復興に尽力する彼の覚悟は、現代の私たちにとっても多くの示唆を与えてくれます。
また、この話がただの美談にとどまらず、「今、何ができるのか」を考える重要性を強調している点も素晴らしいです。
過去の失敗や外的な障害にとらわれず、行動を続けることが成功の鍵であると改めて教えられます。
この教訓は、現代の挑戦やプロジェクトにおいてもそのまま適用できる普遍的なものです。
さらに、諺と歴史的エピソードを絡めることで、言葉の持つ力を深く味わえる構成になっています。
読み手に強いモチベーションを与えるこの文章は、単なる日常の啓発を超えて、行動の原動力を与えるものであり、多くの人に勇気を与える内容だと思います。
否定的な感想
「思い立ったが吉日」という考え方がすべての状況に適用できるわけではないことも意識すべきです。
特に、現代社会ではリスク管理や計画性が重視される場面が多く、感情に任せて行動することでかえって失敗を招く可能性もあります。
過去の失敗を軽視せず、それを教訓として次の一歩に活かす姿勢が求められる場面もあるでしょう。
また、穀田屋十三郎の話は非常にインスピレーショナルですが、そのような覚悟や信念を持てる人ばかりではないのも現実です。
特に現代では、経済的な余裕や精神的な強さがなければ、思い立っても実行に移せない人も多いでしょう。
この点で、「挑戦しなければならない」というプレッシャーを感じさせてしまう可能性がある点には注意が必要です。
さらに、この話が成功の一例を示している一方で、成功に至らなかった事例にも目を向けるべきではないかと思います。
失敗を恐れず挑戦することの重要性を説くならば、そのリスクや失敗した場合の心構えについても言及していれば、さらに深みのあるメッセージになったかもしれません。