自らの経験を語らず
プロ野球の千葉ロッテマリーンズで監督を務める吉井理人氏は、選手への指導法について「自分の経験を語らないことを意識している」と述べています。
「私自身が選手時代も、監督、コーチ、先輩の経験談の押しつけほど退屈なものはなかった。できるだけ選手の口から出るように仕向けていく必要がある」として、選手自身に課題を気づかせるための質問を多く投げかけているといいます。
このアプローチはスポーツの世界に限らず重要と言えるでしょう。職場でも、上司や先輩が自身の経験を基に、部下や後輩を指導することがあるでしょう。
しかし、指導される側からすると、上司や先輩の経験は時代背景や会社の状況が異なるため、理解しにくい場合もあります。
指導する立場の人は、まず部下や後輩と積極的にコミュニケーションを図り、良好な人間関係を築くことが肝要です。垣根のない関係性の中での会話から、課題の発見や解決につながる質問や言葉が見つかります。
相手が主体的に考え、行動できるよう意識して指導にあたりましょう。
今日の心がけ◆コミュニケーションを密にとりましょう
出典:職場の教養2月号
感想
吉井理人監督の「自分の経験を語らない」指導法には、現代の指導者にとって非常に重要な視点が含まれていると感じました。
従来の指導では、成功した先輩や上司が自身の体験を語ることが一般的でしたが、それが必ずしも後輩や部下にとって有益とは限りません。
吉井監督が言うように、「経験談の押しつけ」は、ともすれば退屈であり、場合によっては時代遅れのアドバイスになってしまうこともあります。
そのため、選手自身が考え、答えを導き出せるように促すというアプローチは、主体性を育む上で非常に効果的だと思いました。
また、この考え方はスポーツに限らず、職場や教育の現場にも当てはまる点が興味深いです。
特に企業の指導環境では、「昔はこうだった」「俺の時代はこうやって乗り越えた」といった経験談がよく語られます。
しかし、時代が変われば、価値観もビジネスの環境も変わるため、過去の成功体験が今の環境にそのまま当てはまるとは限りません。
そのため、上司や先輩が「自分のやり方を教え込む」のではなく、部下や後輩が「自ら考える」ことを促すという姿勢は、現代における理想的な指導スタイルだと感じました。
さらに、「課題の発見や解決につながる質問や言葉を見つける」ことの重要性も強く共感できました。
指導する側が一方的に解決策を提示するのではなく、質問を投げかけることで、相手に考えさせるというプロセスは、まさに「教える」のではなく「気づかせる」指導法です。
これにより、相手は受け身ではなく主体的に学ぶことができ、結果的に成長につながるでしょう。
「今日の心がけ」として「コミュニケーションを密にとりましょう」というアドバイスも、シンプルながら非常に実践的です。
表面的な指導ではなく、深い対話を通じて相手の本質を理解し、その上で適切な質問を投げかけることが、より良い人間関係と成長の促進につながるのだと感じました。
否定的な感想
吉井理人監督の指導法は非常に理にかなっている一方で、「自分の経験を語らないこと」を極端に徹底しすぎると、逆に選手や部下が参考にできるものが減ってしまう可能性もあるのではないかと感じました。
確かに、経験談の押しつけは退屈であり、時には時代遅れにもなり得ます。
しかし、だからといってすべての経験が無駄というわけではありません。
むしろ、適切なタイミングで自分の経験を伝えることで、相手が効率的に学べるケースも多いはずです。
また、すべてを「質問によって気づかせる」方法に頼るのは、指導を受ける側の負担が大きくなりすぎる危険性もあります。
もちろん、主体性を育てることは重要ですが、時には「具体的な手本を示す」ことも指導の一環ではないでしょうか。
例えば、新人選手や新入社員に対しては、まず基本的な考え方や手法を伝え、その後に応用を考えさせるという段階的なアプローチの方が、実践的かもしれません。
「自分の経験を一切語らない」という極端な考え方ではなく、「必要に応じて経験を伝えつつ、主体性も育てる」というバランスの取れた指導が理想的だと感じました。
さらに、「コミュニケーションを密にとることが大切」と言われても、それをどのように実践するのかについての具体例が少なかった点がやや気になりました。
ただ「会話を増やしましょう」というだけでは、実際にどうすれば良いのかが曖昧です。
例えば、「質問を投げかける際には、相手が考えやすいように選択肢を示す」「相手の言葉を否定せずに、さらに深く考えさせる質問をする」といった実践的なテクニックが紹介されていれば、より分かりやすかったかもしれません。
「今日の心がけ」の「コミュニケーションを密にとりましょう」という言葉は重要ですが、単に回数を増やすのではなく、「どのような質のコミュニケーションを取るのか」を意識することが大切ではないでしょうか。
コミュニケーションの量よりも、相手が本当に考え、気づきを得られるような質の高い対話を心がけることが、より効果的な指導につながるのだと感じました。