予期せぬアナウンス
私たちは感謝の思いをどれだけ言葉にできているでしょうか。 出張の多いA氏には、今でも忘れられない印象深いフライトがあります。
ある日、搭乗した飛行機が目的地に着陸後、 通常とは異なるタイミングでパイロットからアナウンスが流れたため、 A氏はイヤホンを外して耳を傾けました。
「お客様、本日で客室業務員の〇〇が最後のフライトとなりました。 長年にわたり、お客様に快適な旅を提供できるよう最善を尽くし、 我が社に貢献してくれた〇〇に、機長としてお礼を言わせていただきます。 ありがとうございました」
機内は乗客からの温かな拍手で包まれました。 A氏は心が温まり、このフライトを共にできたことが忘れられない思い出となったのです。
最後の仕事となった客室業務員は、この一件で今までの仕事に誇りを感じ、 他のスタッフとのつながりも強固になったのではないでしょうか。
こうした特別な場に限らず、日常の職場や家庭でも感謝の気持ちを伝えるときは、「ありがとう」と言葉にして伝えたいものです。
今日の心がけ◆感謝を言葉で伝えましょう。
出典:職場の教養3月号
感想
この話は、感謝の気持ちを言葉にすることの大切さを改めて思い出させてくれます。
特に、客室業務員の最後のフライトをパイロットがわざわざアナウンスで讃えたという点が印象的でした。
こうした心遣いがあることで、単なる業務の終わりではなく、その人のキャリアの集大成が特別な形で締めくくられたのだと思います。
A氏が心を動かされたように、その場にいた乗客一人ひとりにとっても、このフライトは単なる移動手段ではなく、心温まる体験へと変わったのでしょう。
このエピソードには「人は感謝をされることで、自分の仕事に誇りを持てる」という大切なメッセージが込められています。
日々の仕事はルーチンになりがちで、ときには「自分のしていることに意味があるのか」と疑問を抱くこともあるかもしれません。
しかし、最後にこうして公に感謝されることで、「自分のやってきたことには価値があったのだ」と実感できるのではないでしょうか。
また、乗客が拍手を送ったことも重要なポイントです。単にパイロットの言葉だけでなく、それを聞いた周囲の人々が反応し、温かい雰囲気を作り出した。
この一体感こそ、感謝が持つ力の象徴だと感じました。
感謝は一人で完結するものではなく、言葉として表現されることで、周りの人々にも伝播していくものなのかもしれません。
そして、この話の根本には、「特別な場面でなくても、感謝を伝えることが大事」という教訓が含まれています。
職場や家庭でも、「ありがとう」という言葉を積極的に口にすることで、関係性がより良いものになるはずです。
些細なことでも言葉にすることで、相手にとっては思いがけない励ましになることもあるでしょう。
否定的な感想
この話は美しいものですが、現実には「感謝を言葉にすること」に対して抵抗を感じる人も多いのではないでしょうか。
特に日本の文化では、感謝の気持ちは態度や行動で示すことが重視され、直接的に「ありがとう」と口にするのが苦手な人も少なくありません。
そうした背景を考えると、この話のような場面が日常的に広がるのは難しいかもしれません。
また、こうしたアナウンスが常にポジティブに受け取られるとも限りません。
たとえば、フライトが遅延していたり、乗客が疲れていたりすると、「早く降りたいのに、なぜこんな話を?」と感じる人もいるかもしれません。
感謝の表現は、タイミングや状況を考えなければ、逆に負担に感じさせてしまう可能性もあるでしょう。
さらに、「感謝を言葉にすることが大事」というのは確かに重要ですが、言葉だけが全てではないとも思います。
日常の職場や家庭では、行動で示す感謝の形も同じくらい大切です。
たとえば、同僚の負担を少し軽くする手助けをしたり、家族の好きな料理を作ったりすることも、十分な感謝の表現になります。
言葉にしなくても伝わる思いやりがある一方で、「言葉にすることが絶対に必要」というような考え方になってしまうと、本来の感謝の多様な形を狭めてしまうのではないでしょうか。
また、こうした特別な場面での感謝は感動を生む一方で、「普段の仕事では感謝されないのが当たり前」という風潮を助長してしまう可能性もあります。
最後のフライトだからこそアナウンスされたわけですが、では日々の業務の中で客室業務員はどれほど感謝されていたのでしょうか。
もし普段からもっと頻繁に「ありがとう」の言葉が交わされていれば、退職の際に特別なアナウンスをしなくても、本人は十分な満足感を得ていたのかもしれません。