ご安全に
危険を伴う製造業や建設業などの業界では「ご安全」にという挨拶が使われることがあります。
Mさんの勤める建設会社では、「今日一日、ご安全に」と互いに言葉を掛け合って朝礼を締めくくり、仕事がスタートします。
ある日、Mさんがこの挨拶の由来について先輩に尋ねてみると「高いところで作業をすることが多い現場では、いつ事故が起きても不思議ではない。 だから、昔からお互いにご安全にという言葉をかけあってきたんだ」と教えてくれました。
どのような立場でも、任された仕事に対する責任があります。 それは会社内の役職や役割に応じた責任、お客様に対する責任など、様々です。
建設業では、請け負った建物の出来栄えはもちろんのこと、事故や怪我なく、無事に仕事を終えることも仕事の大切な責任の一つと言えます。
今朝も朝礼で、「今日一日、ご安全に」と挨拶し「安全第一を心がけ、しっかり仕事に取り組もう」と意欲を燃やして現場に向かったMさんです。
今日の心がけ◆安全意識を持ちましょう
出典:職場の教養3月号
感想
「ご安全に」という挨拶の一言に、こんなにも深い思いが込められていることに改めて心を打たれました。
建設現場という危険と隣り合わせの環境で働く人々が、日々の挨拶に「生きて帰ろう」という無言の誓いを込めている——その連帯感と緊張感がこの短い言葉からひしひしと伝わってきます。
単なる形式的な挨拶ではなく、お互いの命を気遣う「祈り」に近いものとして響くのです。
Mさんのように、日常の何気ない言葉の意味を掘り下げ、先人たちの思いに触れようとする姿勢には敬意を抱きました。
今という時代においても、「責任」という言葉が単なる義務感ではなく、「仲間とともに無事に一日を終える」という具体的な願いとして生きている。
それはとても健全で、誠実な価値観です。
「今日の心がけ」にあるように、安全意識とはマニュアルを守ることだけでなく、互いに命を思いやる心から始まるのだと気づかされました。
社会のあらゆる場面で、このような意識がもっと広がっていってほしいと思います。
否定的な感想
「ご安全に」という言葉の重さが、あまりにも日常的になってしまうことで、本来の意味や緊張感が薄れていく危うさもあると感じました。
形式的な言葉は、使い続けるうちに「言ったつもり」「意識したつもり」になってしまい、実際の行動や心構えが伴わないことも少なくありません。
安全は挨拶ではなく、具体的な行動と習慣によって守られるべきものです。
また、こうした挨拶が必要な現場が、いかに危険と隣り合わせであるかという現実にも、改めて複雑な思いを抱きます。本来であれば、「ご安全に」と念じ合わなければならないほどのリスクを抱えた働き方そのものを、もっと改善していくべきではないか——と。
現場で働く人々の尊い責任感に甘えて、社会全体がその構造を見直す努力を怠ってはいないかという問いも浮かびました。
言葉の力は大切ですが、それだけに頼らず、根本的な安全体制や労働環境の整備が本当に伴っているかを、私たち一人ひとりが問うべき時代に来ているのだと思います。