2025年3月30日(日) 後始末

後始末

Jさんは、転勤に伴い引っ越しをすることになりました。

業務の引き継ぎなどで仕事も忙しい中でしたが、物品の整理をしながら荷作りを行ない、引っ越し作業を着々と進めていきます。

いよいよ引っ越しの日が迫ってきた頃、家の掃除を始めました。レンジフードやコンロの油汚れを落とし、シンクや浴槽の蛇口などはしっかり水垢をとって、細部にわたって磨きあげていきました。

最初は〈大変だ〉と半ば嫌々取り組んでいたJさんでしたが、次第に心持ちが変わっていきました。この家で過ごした数々の思い出がよみがえり、〈ここで暮らせて良かった。お世話になった〉と、感謝の気持ちが湧いてきたのです。

部屋の清掃を終え、晴ればれとした気持ちで引っ越しを終えたJさん。〈新しい場所でも頑張ろう〉と心機一転、新天地に向かうことができました。

四月から新年度を迎える企業も多いことでしょう。職場の清掃などの後始末で区切りをつけ、新たな気持ちで業務に臨みたいものです。

今日の心がけ◆職場を整えましょう

出典:職場の教養3月号

感想

Jさんの引っ越しにおける「後始末」は、ただの掃除という行為を超えて、自分自身との対話であり、感謝を形にする時間だったように感じました。

最初は「大変だ」と感じながらも、時間をかけて丁寧に掃除を進めるうちに、住んでいた家に対する愛着や、日々の積み重ねへの感謝が自然と湧き上がってくる。

その変化のプロセスがとても人間らしくて、心を打たれます。

特に、掃除という日常的で地味な行動が、「この家で暮らせて良かった」という内面的な気づきに繋がっていく流れが素晴らしいと思いました。

思い出と向き合い、過去に丁寧にけじめをつけることは、次の一歩をしっかり踏み出すために欠かせない儀式のようでもあります。

そうした丁寧な後始末があってこそ、「新しい場所でも頑張ろう」という前向きな気持ちが生まれるのだと思います。

「今日の心がけ」にあるように、職場でも空間を整えることで、自分の心も整う。

環境を丁寧に扱うことは、自分自身への敬意でもあるのだと、Jさんの行動を通して改めて気づかされました。

否定的な感想

Jさんのように、引っ越しの忙しさの中でレンジフードや蛇口の水垢まで徹底的に掃除できる人は、そう多くないのが現実です。

この物語は美しくまとまっているけれども、現実の中ではそこまで完璧に後始末できずに終わってしまう人も多く、その点では少し理想化されすぎているとも感じました。

また、Jさんの心持ちが「嫌々」から「感謝」へと変わっていく過程が、やや唐突に描かれている印象も否めません。

もっと細やかに、どのような場面で記憶がよみがえり、どんな感情の揺れがあったのかが描かれていたら、読者もより共感しやすかったのではないでしょうか。

ただ「思い出がよみがえった」と言われるだけでは、その深みが十分に伝わってこないのが少しもったいないと感じました。

「今日の心がけ」が提案するように職場を整えることは大切ですが、忙しさに追われる現代の働き手にとって、それを実践するハードルは思いのほか高いです。

理想だけでなく、現実の困難にも寄り添ったメッセージがあれば、もっと多くの人の心に届いたかもしれません。