2025年4月10日(木) オールラウンドな生き方

オールラウンドな生き方

昨年七月に発行された新紙幣の五千円札の肖像となっている津田梅子は、明治から大正にかけて女性の地位向上と女子教育に尽力した教育家です。

明治四年に日本初の女子留学生の一人として六歳で渡米し、十七歳で帰国後、華族女学校などで英語教師を務めました。二十五歳から二年半の再留学を経て、明治三十三年に女子英学塾(現・津田塾大学)を設立しました。

開校式では「All-round women となるよう心掛けねばなりません」と述べたと記録されています。これは「英語だけに囚われず視野の広い女性を目指す」ことを薦めたものであり、現在も建学の精神として受け継がれています。

彼女が目指した女子教育の目的は、男性と同様の社会的地位を得ることではなく、様々な分野を広く学び、必要とされる人間になることでした。

私たちの職場においても、専門分野に磨きをかけることはもちろん、専門外の分野にも目を向けて広く見識を深めることが重要です。様々な場面に対応できるオールラウンドな生き方を目指したいものです。

今日の心がけ◆幅広い分野に興味を持ちましょう

出典:職場の教養4月号

感想

津田梅子氏の歩みは、「時代の制約を超えた先見性」と「教育に対する熱意」に満ちていて、読んでいて強く心を打たれました。

特に「All-round women となるよう心掛けねばなりません」という言葉は、専門性の追求だけではなく、人間としての幅や柔軟性を大切にする姿勢を明確に示しています。この精神が現代にもなお生きているという事実に、深い敬意を感じます。

彼女の教育理念は、単に「女性の地位向上」を叫ぶだけでなく、「必要とされる人間」となるための多角的な学びを促しています。

それは性別や役割に縛られない、もっと本質的な「人間のあり方」への問いかけのようにも思えました。

職場においても、このような精神を持つことは、自分自身の価値を高め、組織に多様性と柔軟性をもたらす大きな力になると思います。

「今日の心がけ」で促されている「幅広い分野に興味を持つ」という姿勢は、時代が変わっても変わらぬ普遍的な智慧です。

自分の世界を少しずつ広げていくことが、結果として誰かの役に立ち、また自分自身の人生を豊かにしていくのだと改めて感じさせられました。

否定的な感想

「オールラウンドな生き方」を目指すことには、時に重圧や曖昧さを生み出す側面もあると思います。

何事にも広く目を向けることは尊い姿勢ですが、逆に「これ」といった強みを見つけられずに迷ってしまう人にとっては、その指針がかえって負担になることもあるのではないでしょうか。

また、「必要とされる人間になること」が教育の目的として語られていますが、この「必要とされる」という言葉には、外からの評価に依存してしまうリスクもあります。

他者のニーズに応えようとするあまり、自分の本来の望みや個性を見失ってしまうことも少なくないはずです。

特に現代の働き方では、あまりに多くのスキルや役割が求められる傾向があり、それが「オールラウンドであれ」という圧力として作用することもあります。

広く学ぶことは重要ですが、それが「深く掘ること」から逃げる理由になってはいけないと感じました。

「幅広い分野に興味を持ちましょう」という今日の心がけも、無理に広げすぎて疲弊してしまわないよう、自分のペースや関心を大切にすることも忘れてはならないと思います。