2025年4月16日(水) 心をつなぐ

心をつなぐ

日常生活で大切にされる礼節の一つに、挨拶があります。

営業職のTさんの職場では、朝礼で挨拶の練習を行なっています。「おはようございます」「失礼します」といった挨拶の言葉を明るく発声し、きちんとお辞儀をする動作を繰り返すのです。

入社して間もない頃、Tさんは〈なぜ毎朝このような練習をするのか〉と思っていましたが、実際に営業で外回りをする中で、その大切さを実感しました。

ある日、Tさんが契約を取り付けた企業担当者と会食をした際、契約に至ったきっかけを聞くと、Tさんの気持ちの良い挨拶だったと教えてくれました。

元気な挨拶をして会議室に入ってきたTさんに好印象を持ち、他社よりも商談がスムーズに運んだというのです。

仕事においては、世代や地域を超えて人と人が交わります。挨拶などの礼儀作法は、人の心をつなぐ役割を果たします。当たり前のことと思われがちですが、一人ひとり心をこめて、丁寧な挨拶を行なっていきたいものです。

今日の心がけ◆気持ちの良い挨拶をしましょう

出典:職場の教養4月号

感想

この話が描いているのは、誰もが一度は耳にしたことのある「挨拶の大切さ」というテーマですが、そこにTさんの具体的な経験が加わることで、単なる道徳的な話ではなく、実感のこもったリアルなメッセージとして伝わってきました。

特に、毎朝の「挨拶練習」という一見地味な取り組みが、ビジネスの現場で信頼を築くきっかけとなったエピソードは、丁寧な礼節の持つ力を再認識させてくれます。

「心をつなぐ」という表現が、まさに的を射ていると思いました。

挨拶は形式ではなく、その一言の中に相手を思う気持ちや、敬意、誠実さが滲み出るものです。

だからこそ、受け手の心にしっかり届き、人間関係の土台を作っていくのだと感じます。

Tさんのように、最初はその意味がわからずとも、経験を通してその価値に気づく過程には、成長と気づきの尊さが表れており、読む者の心に温かな共鳴を生みます。

「今日の心がけ」にある「気持ちの良い挨拶をしましょう」という言葉は、日々の生活の中で忘れがちな原点を思い出させてくれます。

挨拶ひとつで人の印象が変わり、時には人生を動かす出会いにつながることもある。

そんな小さな奇跡が起こり得るからこそ、改めて挨拶を丁寧にすることの大切さを、心に刻みたいと思わせてくれました。

否定的な感想

この話にはやや一方向的な価値観の押しつけを感じる部分も否めません。

挨拶が大切であることは広く共有されている事実ではありますが、それを過度に「契約が取れた理由」として強調してしまうと、人間関係の深みやビジネスにおける信頼の構築が、単純な行動一つに還元されてしまうような印象を受けました。

また、Tさんの職場のように「朝礼で毎日挨拶の練習をする」という文化が、すべての人にとって心地よいものかどうかも考慮すべきです。

特に形式的な挨拶や、表面的な明るさが求められる環境では、それを「演技」として感じてしまう人もいます。

礼儀や挨拶が本当に「心をつなぐ」ためには、その根底に「自分の言葉として発する」意識が必要であり、形式だけを重視する訓練では、かえって本質を見失う危険もあります。

さらに、挨拶の善し悪しが契約の可否に直結するという語り口は、人を評価する基準が外面的な要素に偏ってしまっているようにも映ります。

もちろん第一印象は大切ですが、真に信頼される存在になるには、言葉や態度の「その先」にある誠実さや真摯な姿勢こそが重要ではないでしょうか。

挨拶がすべてのカギであるような描かれ方には、少し違和感を覚えました。