2025年4月18日(金) 十八番

十八番

「十八番(おはこ)」とは、得意な芸や技を指す言葉で、「この歌は彼の十八番です」とか「あなたの十八番はなんですか」などと使われます。「十八番」と書いて、なぜ「おはこ」と読むのかについては諸説あります。

一八三二年、歌舞伎役者の七代目・市川團十郎(いちかわだんじゅうろう)が、市川家の得意とする芸の中から、後に「歌舞伎十八番」と呼ばれる十八の演目を選びました。

その演目の台本を箱に入れて大切に保管したことから、「十八番」を「おはこ」と呼ぶようになったという説が有力とされています。

歌舞伎の世界に限らず、日々の暮らしの中で、何か一つでも夢中になれる趣味があれば、生活に潤いが加わります。さらに、仕事や家庭でも張り合いが生まれるのではないでしょうか。

ただし、趣味に打ち込みすぎると、生活のリズムが崩れてしまうこともあります。例えば、家族との時間が減り、その関係に影響を与えることも考えられます。

好きなことほど、節度を持って日々の暮らしに取り入れたいものです。

今日の心がけ◆楽しいことほど節度を持ちましょう

出典:職場の教養4月号

感想

この話は、「十八番」という言葉の由来から始まり、趣味や得意なことが私たちの人生にもたらす彩りについて、静かに、しかし確かな説得力をもって語られています。

特に、市川團十郎の「歌舞伎十八番」を箱に収めて大切にしたという逸話には、日本文化の奥ゆかしさと、「得意なこと=誇るべきもの」としての価値が感じられ、非常に魅力的です。

日々の暮らしにおいて、自分の「おはこ」があることは、生きる上での支えや喜びになります。

忙しさの中で自分を見失いそうになる時、自分が「これだけは」と言えるものを持っていることは、精神的な安定や自己肯定感につながります。

それはプロフェッショナルである必要もなく、ただ夢中になれるだけでも十分に意味があります。

加えて、「趣味に夢中になること」と「節度を持つこと」を並べて語っている点も、この話にバランスと深みを与えています。

楽しいことだからこそ、生活との調和が必要であるという指摘は、現実的でありながらも前向きで、「人生を楽しむ」ことと「責任を果たす」ことの両立が大切だと教えてくれます。

「今日の心がけ」である「楽しいことほど節度を持ちましょう」は、自分の楽しみをより豊かで持続可能なものにしていくための、確かな指針と言えるでしょう。

否定的な感想

この話が扱っている「十八番=得意なこと」に対する前向きな姿勢は好感が持てますが、その裏で感じるのは、「趣味や特技を持たない人」に対してやや無言のプレッシャーを与えているのではないかという懸念です。

全ての人が自分の「おはこ」と呼べるものを持っているわけではなく、「好きなことも夢中になれることも見つけられない」状況にある人にとっては、このような話が逆に焦りや劣等感を生む可能性もあります。

また、「趣味は生活に潤いを与えるが、やりすぎると家庭に悪影響」というくだりは、少し旧来的な価値観に基づいているようにも感じられます。

家族の時間を最優先とする姿勢が美徳として描かれていますが、個人の充実や自由もまた、家庭を支える重要な要素です。

趣味に夢中になることが即ネガティブな影響をもたらすように語られている点は、趣味に救われている人たちにとっては窮屈に感じられるかもしれません。

「節度」が大切であることは確かですが、それをあまりにも強調すると、「自分の楽しみすら自制しなければならない」というストイックさばかりが先行してしまう恐れもあります。

本来、趣味や好きなこととは、人を自由にし、時に人生を切り開く力にもなるものです。

その力強さや肯定的な面に、もう少し焦点を当ててもよかったのではないかと感じました。