明暗を分ける心
日常生活でも仕事でも、私たちは時に思わぬ出来事に遭遇します。そうした場合、どのように受け止めるでしょうか。
ある会合で、上席者がやむを得ぬ事情で欠席し、急遽二人の代役を立てることになりました。Aさんは「なぜきちんと約束通り出席しないのか。上席者として失格ではないか。突然打診されても困る」と不足不満の心でいっぱいになりました。
一方、Bさんは「なかなか経験できない挨拶の役割が回ってきた。いい勉強の場を与えられた」と前向きな気持ちを持ちました。
物事にはいろいろな受け止め方がありますが、最終的には明るく積極的に受け止めるか、暗く否定的に受け止めてしまうかのいずれかでしょう。
冷静になって考えれば、どちらを選択する方が自身の成長にとっても、会社の今後の展開においても有益か分かるはずです。
必要があって今の状況が起こったのだと、日ごろから物事を肯定的に受け止める習慣を身につけたいものです。
今日の心がけ◆何事も肯定的に受け止めましょう
出典:職場の教養4月号
感想
この話には、日常の中で誰しもが直面する「心の選択」が端的に描かれていて、とても共感を覚えました。
予想外の出来事が起こったとき、どちらの心持ちを選ぶかは、自分の意思に委ねられているという事実を、AさんとBさんの対比が見事に表しています。
特にBさんのように、「予期せぬチャンス」として前向きに捉える姿勢は、まさに成長への扉を開く鍵だと感じました。
私たちは、自分の枠を超えるような経験をすることでしか、本当の意味での成長を遂げることはできません。
そう考えると、「困難」や「不意の変化」は、むしろ必要な栄養素のようなもので、だからこそ、肯定的に受け止めることが重要だというメッセージが響きます。
また、「必要があって今の状況が起こった」とする視点は、「今日の心がけ」としてとても深い意味を持っています。
これは運命論というより、自らの内面を磨くためのチャンスとして捉える視点であり、前向きな自己責任の思想と言えるでしょう。
日々の中でこのような心構えを持てたら、人生の質そのものが変わっていくように思えます。
否定的な感想
Aさんの感情もまた、人間らしいごく自然な反応であり、それを単に「否定的」として括ってしまうのは少し乱暴に感じられました。
人は、急な変更や想定外の事態に対して、まず驚きや戸惑い、時には不満を感じてしまうものです。それは決して未熟さの表れではなく、自分の責任や準備に対する誠実さの裏返しとも言えます。
Aさんのような反応を「成長のない心」として一方的に切り捨てると、「ありのままの感情を抱くこと」すら否定されてしまうようで、少し窮屈にも感じました。
また、「何事も肯定的に受け止めましょう」という「今日の心がけ」は、確かに前向きではありますが、「無理にでもポジティブにならなければならない」というプレッシャーを生む可能性もあります。
時にはネガティブな感情も、その場を通して熟成され、やがて肯定へと変わる過程が必要なこともあるはずです。
「ポジティブであること」自体が目的になってしまうと、かえって自分に嘘をついてしまう危うさもある。
その点で、この話にはもう少し感情のグラデーションや、Aさんの気持ちへの配慮が欲しかったようにも思いました。