菖蒲湯
本日は五節句の一つ、端午の節句です。男の子の健やかな成長を願う日であり、鯉のぼりを揚げ五月人形を飾り、菖蒲湯に入るなど、様々な習慣があります。
菖蒲湯に入る習慣は、菖蒲の強い香りが邪気を祓うと信じられていることに由来します。旧暦の五月は雨季を迎え、病気や災厄が増える時期でもあるため、これらから身を守る願いが込められているのです。
Aさんの長男は菖蒲の香りが苦手で、鼻を押さえながら入浴します。その姿を見て、Aさん自身も小さい頃に香りを嫌がっていたことを思い出しました。
そして、自分が息子の健康を願うように、かつて両親も同じような願いで、Aさんを菖蒲湯に入れてくれたのではないかと、親の愛情に思いを寄せたのでした。
後日、両親にそのことを確認することができ、季節ごとの年中行事というものは、家族のつながりを強く結び直してくれる意味があると感じたのでした。
今日は、菖蒲湯に入り心身を清め、健康と安全を願う伝統を大切にしながら、家族と共に心豊かな時間を過ごしてみてはいかがでしょう。
今日の心がけ◆家族の健康や安全を願いましょう
出典:職場の教養5月号
感想
この話には、日本の伝統行事が持つ「家族の絆を深める力」が温かく描かれていて、とても心に響きました。
菖蒲湯という古くから続く習慣が、単なる風習ではなく、親から子へと受け継がれる愛情表現であり、また子ども自身が成長の過程でその意味を理解していくという流れに、深い感動を覚えました。
特に、Aさんが息子の様子を見て自身の幼い頃を思い出し、親の愛情に気づくシーンには、親子間で代々続く見えない絆の尊さが滲んでいて、胸が熱くなります。
また、「今日の心がけ」として提案されている「家族の健康や安全を願う」ことは、現代社会においても非常に重要でありながら、つい忙しさにかまけて忘れがちなものです。
この物語は、そうした基本的な願いを改めて大切に思い出させてくれます。
日々の暮らしの中で、節目の行事をきちんと重んじることの大切さを、やさしくしかし力強く伝えてくれている点がとても印象的でした。
否定的な感想
この話にはやや理想化された側面も感じられました。
現代の家庭環境では、行事を丁寧に行う余裕がなかったり、伝統文化に対する関心が薄れていることも少なくありません。
Aさんのように親から子へスムーズに愛情や文化が受け継がれている例は、むしろ希少なのではないかと思います。
そのため、読者によっては「こんなふうに家族で行事を祝えるのは一部の人だけ」と疎外感を抱いてしまう可能性もあるでしょう。
また、菖蒲湯の香りを嫌がる子どもに対して、無理に伝統を押し付けることへの疑問も浮かびました。
伝統を守ることは大切ですが、無理強いによって嫌悪感や抵抗感を植え付けてしまっては、本来の「健やかな成長を願う」という意図が逆効果になる場合もあります。
行事の意義を大切にしながらも、柔軟に子どもの感性を尊重するバランスを取ることが、現代の「家族のつながり」を築く上ではより求められているのではないかと感じました。