鎬を削る
二者が激しく競り合っている状態を「鎬を削る」と表現することがあります。
鎬とは、刀などの刀剣で、その性能を高めるために設けられた刃と背の間の厚みの部分を指します。日本では中世から近世にかけて、斬り合いの際にこの部分が削れるほど激しく刀を交えたことに由来しています。
実力が伯仲した者同士が競争すると、力の差が歴然としている場合や単独で行なう場合に比べて、より高いレベルに到達することができます。
鎬を削るほどの激しい競争でなくとも、より高みを目指そうとする意識を持って仕事に向き合う人が多い職場では、お互いに感化し合い、さらに良いものを生み出す好循環が生まれます。
ただし、勝つことだけを目的として競争すると、勝ったことで慢心したり、威圧的な言動をとったり、仲間の失敗を責めたりすることになりかねません。
仕事中は率先して適度な緊張感を保ち、真剣に取り組みつつ、周りの良さを認め合う、メリハリのある職場風土を築くことが大切なのです。
今日の心がけ◆切磋琢磨しましょう
出典:職場の教養5月号
感想
「鎬を削る」という言葉の持つ歴史的背景と、それが現代の職場環境にどう生かされうるかを結びつけたこの話には、とても深い示唆を感じました。
特に、刀の鎬が削れるほどの斬り合いという、極限の緊張感と真剣さを、現代の仕事の在り方に投影する視点には、言葉の重みと精神性が込められています。
実力が拮抗する者同士の競争は、確かに相互に刺激を与え、予想を超えた成果を引き出す力がある。
そのような環境では、一人では到底届かないような高みへと導かれる可能性が広がります。
単なる勝ち負けを超えた、「切磋琢磨」という本質的な価値を見失わずに競い合うことの尊さが、この文章を通じて伝わってきます。
また、「今日の心がけ」にある「切磋琢磨しましょう」という一言が、ただの励ましではなく、日々の姿勢をどう持つべきかを示す道しるべのように響きました。
競争を恐れるのではなく、むしろ自分を鍛える機会ととらえて挑戦する。
そのような姿勢を意識することが、日常の中での成長を着実に支えるのだと改めて実感しました。
否定的な感想
この話には理想的な職場像が描かれすぎていて、現実の厳しさや矛盾がやや見えにくくなっている印象も受けました。
確かに「鎬を削る」ような激しい競争が成長を促すことは事実ですが、実際の職場ではその競争がストレスや疲弊を招くことも少なくありません。
常に高い緊張感を保ち続けることは、燃え尽き症候群や人間関係の摩擦を招くリスクとも隣り合わせです。
また、「勝つことだけを目的にしてはいけない」と述べつつも、職場における評価制度や昇進の現実は、どうしても勝ち負けや成果主義に傾きがちです。
そうした現実とのギャップに直面する中で、どれだけの人が「切磋琢磨」の精神を保てるのか――その疑問も残ります。
「周囲の良さを認め合う」という理想の実現には、個々の意識改革だけでなく、組織全体の風土づくりが不可欠ですが、それがどれほど困難かについても言及されていれば、より現実的で説得力のある話になったように思います。