両親へのプレゼント
社会人として一年が経過したKさんは、毎月の給料で趣味に関する物を購入することを楽しみに仕事に励んでいました。今月も何を購入しようか考えていると、ふと学生時代のアルバイト先の経営者の言葉を思い出しました。
その経営者は「社会人になって最初の給料をもらったら、ご両親に何かプレゼントしたらいいよ」と言ったのでした。Kさんはその言葉を忘れ、給料すべてを自分のためだけに使っていたことを反省したのでした。
そこでKさんは、両親に今からでもプレゼントを渡そうと思い立ちました。何を贈ろうかと考えていると、これまで両親が自分のために必需品はもちろん、誕生日などには必ずプレゼントを買ってくれたことを思い出しました。
それに比べて、Kさんが両親にプレゼントすることは、今までほとんどなかったことに気がついたのです。
一年遅れにはなりましたが、両親に感謝の言葉と共にプレゼントを渡したKさん。両親の喜ぶ顔を見て、自身も心が温まりました。
今日の心がけ◆お世話になった人に思いを伝えましょう
出典:職場の教養5月号
感想
この話は、社会人としての成長や自分以外の誰かに心を向けることの大切さを静かに語ってくれる、心に沁みるエピソードだと思います。
Kさんは最初、自分のために働き、自分の楽しみのためにお金を使うことで充実感を得ていました。
それ自体も大切なことです。しかし、ふとしたきっかけで、両親への感謝という原点に立ち返った点が、とても人間的で共感を呼びます。
特に印象深いのは、「一年遅れでも」プレゼントを渡したという部分です。人はしばしば、「今さら遅いかもしれない」と行動をためらってしまいますが、Kさんはその一歩を踏み出しました。
その勇気と誠実さに、私は強い感動を覚えます。
両親の喜ぶ姿を見て自分も嬉しくなる――この相互の温かさは、お金や物を超えた「つながり」そのものです。
「今日の心がけ」にあるように、「お世話になった人に思いを伝える」ことは、相手のためであると同時に、自分自身を豊かにする行為でもあります。
Kさんの体験は、その心がけを実際に体現した、素晴らしい実例だと感じました。
否定的な感想
このエピソードに対して一つ感じるのは、Kさんの行動が、やや受動的であるという点です。
つまり、他者の言葉をきっかけにしなければ、気づけなかったという点に、少し残念さを覚えました。
両親への感謝や贈り物というのは、誰かに言われてから気づくものではなく、もっと日々の生活の中で自然に意識されるべきものではないかとも思います。
また、「プレゼントを渡すこと」が感謝のすべてではないはずです。
形としての贈り物は分かりやすいですが、本当に大切なのは日常の中での言葉や態度の積み重ねではないでしょうか。
Kさんが今後も継続的に感謝の気持ちを持ち続けるかどうか、そこに少し不安も残ります。
もちろん、遅れてでも行動したことは尊いですが、もっと能動的に「誰にどう感謝を伝えるか」という意識を持つことで、Kさん自身の人生もさらに深まるのではないかと思いました。