見えない所で実を結ぶ
落花生の生産量日本一といえば千葉県で、都道府県別シェアの八割を超えています。そのため千葉県のイメージが強い落花生ですが、原産地は南米のペルーであり、一説には一七〇六年に東アジア経由で日本に伝来したといわれています。
落花生はマメ科に属していますが、ほかのマメ科の植物と大きく違う点は実の生り方にあります。黄色い花を咲かせて受粉した後、枯れた花の付け根から子房柄と呼ばれる根のようなものが伸びて土の中に潜っていくのです。
深さ三~五センチに達すると、根のような先端が次第に膨らみ始めます。そこに鞘ができ、その鞘の中に落花生の豆が育ちます。
一度花を咲かせた後に、地上で実を付けずに、人知れず土の中に潜って、殻の中に二~三個の実が並ぶ姿を想像すると、健気で愛らしいだけでなく、着実に結果を残そうとする堅実さを感じさせます。
私たちの社会でも、裏方として見えない所で仕事に取り組んでいる人が大勢います。縁の下の力持ちとして支えてくれる人々の働きに感謝したいものです。
今日の心がけ◆陰の働きに感謝しましょう
出典:職場の教養5月号
感想
落花生の実り方を通して、目に見えない努力や陰の働きの尊さを描いたこの話には、しみじみとした感動がありました。
特に、「人知れず土の中に潜って…」というくだりは、日々の中で注目されずとも誰かのために尽くしている人々の姿と重なり、静かに胸を打たれました。
花を咲かせるという華やかさの後に、地中で粛々と実を結ぶという落花生の習性は、目立つことを目的とせず、確かな結果を出そうとする態度の象徴のように感じられます。
また、「今日の心がけ」として提案された「陰の働きに感謝しましょう」というメッセージは、現代社会において特に意義深いものです。
表に立つことが評価されがちな風潮の中で、裏方で黙々と支える人々に思いを馳せることの大切さを改めて教えてくれました。
こうした小さな気づきを通して、私たち自身の態度や言動も見直す機会が得られるのではないでしょうか。
否定的な感想
落花生の地中での成長を人の営みに結びつける比喩が、やや美化されすぎているように感じられることが少し気になりました。
確かに陰で支える働きには尊敬と感謝が必要ですが、それが「健気で愛らしい」や「堅実さを感じさせる」という言葉で語られると、逆にその現実の厳しさや労苦が軽んじられてしまうようにも受け取れます。
見えない所での努力がしばしば評価されにくい現代社会において、それを「美しい」とだけ語るのではなく、もっと現実的な視点、たとえば不公平さや報われなさといった側面にも触れてほしかったと思います。
陰の働きが尊いのは確かですが、それを当然とせず、どう可視化し、報いるかという課題も、私たちが考えるべき「心がけ」ではないでしょうか。