梅雨の恩恵
雨の多い時期を迎えています。湿気が苦手な人もいることでしょう。
この独特な時期を日本では「梅雨」と呼びます。梅雨は東アジア特有のもので、六月から七月にかけて吹く季節風がもたらす梅雨前線によって、長雨が続く現象を指します。
長雨を表現する言葉には様々な種類があります。例えば三月中旬から四月上旬にかけての「菜種梅雨」、秋の長雨を意味する「秋霖」、十一月下旬から十二上旬にかけての「山茶花梅雨」など、季節を表わす雨の名称が多くあります。
洗濯物がなかなか乾かず、早く梅雨明けを待ち望む人もいるかもしれませんが、雨が多く降ることには恩恵もあります。
例えば、日本食に欠かせない米には雨が必要不可欠です。空梅雨で日照りが続けば、稲は育ちません。梅雨は田んぼに大量の水を供給してくれる恵みの雨であり、歓迎すべき季節なのです。
梅雨の時期に、感謝の気持ちを持って過ごしたいものです。
今日の心がけ◆梅雨の季節に感謝しましょう
出典:職場の教養6月号
感想
梅雨という季節を、単なる鬱陶しい現象としてではなく、「恩恵」として捉える視点に心を動かされました。
日常では、洗濯物が乾かない、蒸し暑い、傘が手放せないといった不便さばかりに目が向きがちですが、この文章はそうした一面的な見方を静かにひっくり返してくれます。
特に「稲にとって不可欠な水」「田んぼに水を供給する恵みの雨」といった具体的な例は、日本人の生活にどれほど梅雨が根ざしているかを実感させます。
また、「菜種梅雨」「秋霖」「山茶花梅雨」といった季節ごとの雨の呼び名が紹介されている点も印象的でした。
日本語の繊細な感受性と、自然と共に生きてきた文化の深さを感じさせてくれます。
こうした語彙を持つことで、私たちはただの「雨」ではなく、それが持つ風情や季節感をより豊かに味わうことができます。
今日の心がけにもあるように、この季節に感謝の気持ちを持つことで、自分の中の捉え方が静かに変わっていく。
そんな内面の変化を促す、優しくも力強いメッセージでした。
否定的な感想
梅雨の恩恵について語るこの文章は、やや理想的すぎる印象も受けました。
農業や自然環境への視点は確かに重要ですが、現代都市生活者の実感からは少し乖離があるようにも感じます。
実際に、梅雨によって引き起こされる健康被害、例えばカビやダニの繁殖によるアレルギー症状の悪化、低気圧による頭痛や気分の落ち込みなど、生活に密着した問題にも目を向けてほしかったと思います。
また、「梅雨に感謝しましょう」という呼びかけが、やや一方的に響く面も否めません。
感謝は自然に湧き上がるものであって、意識的に持つべきだと諭されると、逆に抵抗感を抱く人もいるのではないでしょうか。
梅雨の持つネガティブな側面に共感しつつ、そこから「それでも」恩恵を見出すような文脈であれば、より多くの人の心に届く気がします。
季節の多様な捉え方ができるからこそ、一面的な礼賛ではなく、もう少し複層的な描き方が欲しかったと感じました。