2025年8月6日(水) 指示のあり方

指示のあり方

集団で仕事を進めていく組織においては、依頼や指示をする人と、その内容を受けて実行・実現する人たちという二つの立場から成り立っています。

実際の仕事では、これら両者の役割を持つ人たちが、複雑に絡み合って進んでいくものですが、その初手である指示のあり方は特に重要でしょう。

中間管理職のTさんは、どちらかというと部下に細かく指示を出すタイプです。余りにも小さなことにまで口を出すため、部下たちに煙たがられていました。

見かねた上司から、少しは部下に任せるようにと注意され、その通りにしたところ、かえって仕事が滞るようになってしまったといいます。

原因は、上司であるTさんの「指示癖」にありました。教えられることに慣れていた部下たちは、自分で考えて仕事を進める力が弱くなっていたのでした。

このことがあってから、Tさんは仕事を任せることの重要性を痛感し、指示の方法を変えていったところ、部下たちの自主性も徐々に回復したのでした。

相手を信頼し、状況に適した依頼や指示のあり方を考えたいものです。

今日の心がけ◆信じたら任せましょう

出典:職場の教養8月号

感想

この話は、組織における「任せる勇気」と「信じる姿勢」の大切さを実感させてくれます。

Tさんのように、つい細かく口を出してしまう管理職は少なくないと思いますが、その背景には責任感や完璧を求める気持ちがあるのだと感じました。

しかし、部下にすべてを指示しすぎることで、自ら考える力を奪ってしまうという逆効果に気づいたTさんが、自身の「指示癖」を見直し、指示のあり方を変えていったという過程には、人としての成長がにじんでおり、とても共感を覚えます。

特に心に響いたのは、「信じたら任せましょう」という今日の心がけです。

信じるという行為には、ある程度のリスクを伴いますが、そのリスクを引き受けることでしか、相手の成長も組織の成熟も得られないのだという含意があります。

Tさんが自分の習慣を変えることで、部下の自主性が回復していく様子には、信頼が力を生むという真理が端的に表れているようで、清々しい読後感が残りました。

否定的な感想

この話のように「任せること」によってすべてが好転するという描写には、少し理想化された印象も受けました。

部下たちが自ら考える力を取り戻していったという展開は、あまりにもスムーズすぎて、現実の組織ではなかなかこうはいかないのではないかと思います。

長年、細かく指示されることに慣れてしまった人たちが、急に自律的に動けるようになるには、それ相応の混乱と葛藤があるはずです。

また、「指示癖」が悪いもののように語られていますが、細かい指示が有効に働く場面もあります。

たとえば新人が多い職場や、ミスが許されない工程では、ある程度の指示の明確さが求められます。

つまり「任せる」ことと「指示する」ことのバランスが肝要なのに、その中間の試行錯誤がやや省略されているように感じられました。

指示を減らしただけでは何も変わらないこともある、という視点がもう少し描かれていれば、より深い説得力を持った話になったのではないでしょうか。