自分自身と向き合う
一九三一年の本日、東京の銀座などに、三色灯の自動交通信号機が設置されました。それを記念して八月二十日は「交通信号設置記念日」となっています。
赤信号は「止まれ」という意味ですが、日常生活でも立ち止まらなければいけない場面に、出くわすことがあります。それは問題やトラブル、逆境や壁にぶつかった時です。総じて「苦難」と呼ばれるものです。
そうした苦難に直面すると、私たちは、他人や時代、環境が悪いと、その原因を外的要因に向けがちです。
しかし、そのような時こそ、改めて自分を見つめ直してみてはいかがでしょうか。「何か日常生活で誤りがなかったか」「なぜ自分のもとにこの苦難がやってきたのか」など、自分の考え方や行動を振り返る機会にもなります。
何も問題なく生活できるのは良いことですが、そのような時に自分を過信して失敗したり、周りを置き去りにしてしまったりすることがあるかもしれません。自身の言動に注意し、周囲への配慮を忘れないようにしたいものです。
今日の心がけ◆日頃の自分を振り返ってみましょう
出典：職場の教養8月号
感想
このお話は、現代人にとって非常に大切な「内省することの意義」を的確に描いています。
交通信号という日常的なものを切り口に、「立ち止まる」という行為を比喩的に広げ、自分自身と向き合うきっかけとして提示している点が見事です。
特に、「苦難が訪れたときこそ、自分自身を省みる好機である」という発想は、成長を促す前向きな視点であり、単に困難をやり過ごすのではなく、そこから学びを得ようとする姿勢を促しています。
また、「周囲への配慮を忘れないように」という一文は、自己中心的になりがちな現代の空気に対する静かな警鐘のようにも感じられます。
何も問題がないときほど、自分の過ちに気づきにくい。
だからこそ「今日の心がけ」のように、日常の中で一度立ち止まって振り返る習慣は、心の健やかさを保つうえでとても大切です。
このような意識が広がれば、社会全体の空気も少しずつやわらかく、寛容なものに変わっていくのではないかと思います。
否定的な感想
この文章には少しばかり「内省を美徳とする」道徳的な押しつけがましさも感じられました。
たしかに自分を省みることは重要ですが、それを強く勧められると、「苦難＝自分の責任」という空気が生まれてしまう危険もあります。
すべての困難が自分の言動に起因しているわけではないのに、それを問い直すことを当然視する姿勢は、少々息苦しさを伴います。
とくに、「なぜ自分のもとにこの苦難がやってきたのか」と問う視点は、場合によっては自己否定に陥る危険もはらんでいます。
問題の原因を常に自分の内側に探そうとすることは、自罰的な思考につながりやすく、かえって心を疲弊させてしまうかもしれません。
時には、「これは単に運が悪かった」と受け入れる姿勢も、心を守るためには必要ではないでしょうか。
「自分を省みる」という行為が、自己責任論と混同されないような慎重な配慮がもう少しあってもよかったと感じます。
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