重陽の節句
本日は五節句の一つ、重陽(ちょうよう)の節句です。重陽の節句は中国から伝わり、奇数(陽数)は縁起の良い数字とされ、最も大きい数である「九」が二つ重なることから「重陽」と呼ばれるようになりました。
節句にはそれぞれ独自の意味や決まった供物があり、供物を飲食することから、「節句」は「節供」とも言われてきました。
重陽の節句は別名「菊の節句」とも呼ばれます。菊には邪気を払う力があるとされ、菊を飾ったり、菊酒を飲み交わしたりして、無病息災を願います。
昔の人々にとって、節句は神事のためだけでなく、日々の雑事を離れ、滋養のあるものを食べて英気を養い、周りの人との絆を深める機会でもありました。
菊は桜と同様に日本を象徴する花です。日本には三百五十品種以上の菊があり、世界には二万品種以上あると言われています。
菊の香りはリラックス効果もあるため、「菊湯」にしても楽しめます。本日は菊を愛でながら、自身と周りの人の健康を願ってみてはいかがでしょうか。
今日の心がけ◆互いの健康を願いましょう
出典：職場の教養9月号
感想
重陽の節句にまつわるこの文章は、古来からの文化がいかに日常と密接に結びついていたかを思い出させてくれます。
「九」という数字の重なりが縁起の良さを意味し、それを自然の象徴である「菊」と結びつけて、邪気を払う風習に昇華させた先人たちの感性には、深い知恵と祈りが込められていると感じました。
特に、「日々の雑事を離れ、滋養のあるものを食べて英気を養い、周りの人との絆を深める機会」という部分は、現代人にとっても強く響きます。
効率とスピードが優先される今の生活の中で、こうした「間」を設けることの大切さを改めて思い出させてくれるからです。
私たちが健康や人間関係に思いを寄せる機会として、節句は今でも十分な価値を持っているのではないでしょうか。
「今日の心がけ」の「互いの健康を願いましょう」という呼びかけも、単なる形式的な挨拶ではなく、菊の香りに包まれながら静かに人のことを想う時間を持つという、心のゆとりを勧めているようで、とても優しく、沁みる言葉だと思いました。
否定的な感想
重陽の節句という行事そのものが、現代においてほとんど意識されていないことには、少し寂しさも感じました。
この文章は美しく、節句の背景や文化的意味合いを丁寧に伝えてくれていますが、それだけに、今との断絶が際立つ印象も否めません。
かつては自然と共に生き、季節ごとの節目に祈りや感謝を捧げることが日常に組み込まれていたのに、今はそれが「知識」として語られるばかりで、実感として生活に根付いていないという現実が浮かび上がります。
また、「菊酒」や「菊湯」といった具体的な風習が紹介されているものの、それをどう今に取り入れるのかという視点が欠けているようにも思いました。
伝統の紹介にとどまらず、それを今のライフスタイルにどう活かせるのか、例えば家庭で手軽にできる菊の楽しみ方など、実践的な提案がもう少しあれば、読者との距離が縮まったのではないかと感じます。
節句をただの歴史的な行事として終わらせず、現代の暮らしの中で再び息を吹き返させるための工夫や言葉の力が、今後ますます求められていくのだと思います。
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