気づきと感謝
Aさんは、二人目の子供が生まれるにあたり、妻から「しばらくは早く帰ってきて夕食を作ってほしい」と頼まれました。
それまでは、仕事が終わるとまっすぐ帰宅していたAさんですが、それ以来、買い物をしてから帰宅し、夕食を作るという生活に変わりました。
最初は、家族のために一生懸命に料理をしていたAさんですが、慣れない生活リズムで疲れがたまり、〈いつまで続くのだろう〉と不満を感じ始めていました。そんなある日、寝坊してしまい、会社に遅刻してしまったのです。
この出来事をきっかけに、Aさんは自分の生活を見つめ直しました。そして、いつも家族のために料理を作ってくれている妻への感謝の気持ちを改めて実感すると共に、変化した生活に対して不満を抱いていた自分を反省しました。
Aさんのように、自分でやってみることで初めてその大変さに気づき、感謝の気持ちが深まったという経験を持つ人は多いのではないでしょうか。
当たり前なことにこそ、感謝の気持ちを持ちたいものです。
今日の心がけ◆相手の働きに感謝しましょう
出典：職場の教養10月号
感想
この話を読んで、Aさんの心の変化にはとても人間らしい誠実さと成長が感じられました。
最初は家族のために頑張っていたものの、次第に疲れや不満が積もっていく過程は、現代の多くの家庭に通じるリアルな描写だと思います。
そんな中での寝坊と遅刻という、ささやかな失敗が彼の気づきを促し、妻への感謝へと心が開かれていく描写は、派手さはないけれども心にしみる転機でした。
とくに、やってみて初めて気づくという点がとても印象的です。他者の役割を自分が担うことで、その重みや苦労を実感できるというのは、机上の理解を超えた体験的な納得であり、これは非常に価値のある学びです。
日常の中で見落としがちな「当たり前」の中にこそ、最も深い感謝があるというメッセージは、「今日の心がけ」としても非常に意義深いと感じました。
否定的な感想
このエピソードは少し理想化されている印象も受けました。
Aさんの変化があまりにもスムーズで、まるで一度の寝坊が全てを変えてくれたかのように描かれている点には、少し現実離れを感じます。
実際には、感謝や反省の気持ちを持っても、疲れや苛立ちはすぐには消えないものですし、家庭内の役割や負担のバランスについては、感謝だけで解決できない問題も多くあります。
また、妻の視点がほとんど描かれていない点も気になりました。
妻がどれほどの負担を日々背負っていたのか、またAさんが料理をしている間の彼女の思いなどが語られていれば、より立体的で深みのある物語になったように思います。
感謝の気持ちを持つことはもちろん大切ですが、それと同時に、対話や協力の姿勢を描くことが、より実生活に即した「心がけ」ではないかと感じました。
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