公共交通機関を利用する機会が多いA氏は気を付けていることがあります。
それは、機内や社内でリクライニングシートを倒すとき、後部座席の人へ必ず声を掛けることです。それは、過去に次のような経験をしたためでした。
十年前、全席指定の特急列車を利用した際のことです。平日で空席が目立つ車内でしたが、前席には横並びに三人家族が楽しそうな雰囲気で乗車していました。そしてA氏の前には父親が座っており、目一杯シートを倒していたのです。
〈後から乗車したから仕方ないな〉と約二時間を耐えました。降りる準備をする際も、荷物をまとめるスペースが狭く、一苦労でした。
しかし、前の席の父親はA氏が降車する時になってその存在に気づいたようで、「家族との会話に夢中で、後ろに気を遣わずに申し訳ありませんでした」と、丁寧にお詫びをしてくれたのです。
以来A氏は〈自分も人との会話やパソコン作業で、周囲に気を遣っていなかったかもしれない〉と反省し、後部座席への声掛けを徹底するようになりました。
今日の心がけ◆周囲に気を配りましょう
出典:職場の教養10月号
感想
A氏が自分の経験を通じて他人への配慮を学び、それを日常生活に取り入れている点が印象的です。
リクライニングシートを倒すときに後ろの人に声を掛けるという行動は、小さなことかもしれませんが、相手に対する思いやりの表れだと思います。
現代社会では、周りに無頓着な人が増えているように感じることが多いので、A氏のように他人の存在を意識して行動する姿勢は、とても貴重で見習いたい部分です。
また、前の席の父親が最終的に謝罪したというエピソードも、気づいた後の誠意が示されている点で心温まるものがあります。自分が気づかないうちに周りに迷惑をかけていることがあるかもしれない、という教訓をこの話から受け取りました。
一人ひとりの小さな気遣いが積み重なることで、公共の場がより快適になるのだと思いました。
否定的な感想
リクライニングシート自体が設計上「倒せるもの」として存在しているため、倒す行為そのものに対していちいち声を掛けなければならないという考え方が、少し過剰な気遣いのように感じます。
もしシートを倒すことに不快感があるのであれば、それは利用者個人の責任というよりも、設計や公共交通機関のシステムの問題であり、個人がそこまで神経を使う必要はないのではないかという意見もあるでしょう。
A氏の行動は善意に基づいていますが、すべての場面で「声掛け」が適切であり、必要であるかというと、現実的には必ずしもそうではないと感じます。